中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

12月議会(3)県営住宅の縮小化に対する対応と住宅のセーフティネットとしての県営住宅の在り方について

2019年12月18日 5:39 am
カテゴリ: 活動報告

県営住宅の縮小化に対する対応と住宅のセーフティネットとしての県営住宅の在り方について

県営住宅の縮小化問題について

岐阜県は昨年、入居率が著しく低い県営住宅を対象に、団地内の棟を集約化し縮小化する計画を進めることとしました。岐阜県の県営住宅の管理戸数は、2005年に4,711戸でしたが、現在は4,350戸とこの14年で361戸減っており、今回の縮小化計画でさらに減少する見込みです。

国土交通省によると、市町村を含む岐阜県内の公営住宅は2006年度から2016年度までの10年間に1035戸減少しており、減少率は全国で5番目の多さです。

しかし住まいは人権そのものであり、貧困や高齢化が進む中で公営住宅は住民にとって重要なセーフティネットであり役割を終えてはおりません。

近年の傾向として、公営住宅の中でも、公共交通が充実した地域やバリアフリー住宅、一階の部屋は著しく競争率が高く、高齢化により住環境のニーズが大きく変化しており、40年以上前に建設された公営住宅を今のニーズに合わせ変えていく時が来ていると考えられます。

縮小化事業の対象になっているのは、岐阜市の加野団地、各務原市の尾崎団地、大垣市の荒崎、土岐市の泉北(せんぼく)、多治見市の旭が丘(あさびがおか)、高山市の赤保木、垂井町の宮代(みやしろ)住宅の7団地です。

入居者が半分以下になった住宅をそのまま維持管理し続けることも適切とは言えませんが、移転をすすめるにあたっては移転時期を定めず住民の権利や意向を尊重し経済的負担無く行えるようにすべきである。

同時に、そもそも縮小化の原因は入居者の減少であり、古く住み辛い住環境の改善なしに縮小化を進めても問題の根本的な解決にはならないと考える。移転をすすめるにあたっては住環境の向上も同時に行っていくことを要望します。

移転に係る経費について

中川ゆう子の質問

今回の縮小化事業で、退去の対象となった棟にお住いの方には、引っ越し費用として一律29万円が支払われるようです。

しかし、高齢や病気などでほとんど引っ越し作業ができない場合と、体力や時間がある世帯では引っ越しにかかる費用は異なります。実際に今回移転した方は間取りの関係で家具などの買い替えを余儀なくされとこともあり、資金がたりず持ち出しが生じたとのことでした。

健康で体力があったり、間取りの関係で移転費用を安くあげることができる世帯は良いですが、障がいや病気、高齢などにより困難を有する世帯では持ち出しし転居をしないといけない仕組みになっており、一律支給は公金の取り扱いとしてふさわしいのか疑問もあります。検討が必要と思うがお考えをお聞きする。

都市建築部長の答弁

県営住宅縮小化事業における移転補償金は、国土交通省中部地方整備局が事務局となっている中部地区用地対策連絡協議会の「損失補償算定標準書」にもとづいて算定しております。

この取り扱いは、これまでに実施した北方住宅、近の島住宅における移転事業と同様となっており、公金による保証でありますので、公的に認められた基準により算定することとしているものであります。

今年度、縮小化事業を実施している赤保木住宅と宮代住宅においては、対象者全員の方と移転補償契約が成立しております。対象者の皆様には、移転補償金の考え方についてもご理解いただけたものではないかと考えております。

県が設定した移転完了時期の考え方と不同意者への対応について

中川ゆう子の質問

現在、移転が進められている赤保木住宅の住民からは、別の棟に移転すると、住宅の家賃は高くなり、それに伴って敷金も上がる。生活が不安だ。県から示された選択肢は、赤保木住宅内の別の棟に移るか、県営住宅から退去し自分で住宅を見つけるかの2者択一であり、移転に同意しない、保留の選択肢はなく、県からは移転時期の判断もせかされるように決めた。との声が寄せられています。追い詰められた様子でした。

住民説明会では移転スケジュールが説明されます。おおむね、退去の対象と決まり3か月以内に個別の面談や書類などの手続きが開始、その後9か月以内に移転完了となっています。しかし実際には、住民ひとりひとりには生活があり、病気や仕事、経済的事情もある。また、移転そのものに納得ができない方もいらっしゃると思う。

そもそも今回の移転は入居者の都合ではなく入居者に責任があるわけでもありません。通常、建て替えや公営住宅の処分など大家である県の都合による移転では、家賃は据え置くものと公営住宅法や県条例で定められています。今回は県による縮小化事業でありますが、法の精神にそった説明や対応をすべきと感じるところです。

すくなくとも移転の決断や時期は、最大限、住民の意思を尊重すべきと考える。

そこでお聞きする。県が設定した移転完了時期の考え方と移転に同意しない方への対応についてどのように考えているか

都市建築部長の答弁

県では、縮小化を進める団地ごとに、住民の皆様に移転完了に向けた一定の見通しをお示ししております。

現在、県営住宅縮小化事業を実施している赤保木住宅と宮代住宅においては、今年の4月から説明会を実施し、9月までに対象者全員の方と移転補償契約を締結し、来年3月に移転が完了する見込みとなっており、それぞれの団地の縮小化の進め方について、ご理解いただけたのではないかと考えております。

同意しない、またはできない方への対応ということでありますが、県としましては、今後、事業を進めていくほかの団地につきましても、住民の皆様の移転の決断に必要な時間的余裕を考えながら、これまでと同様に丁寧な説明に努め、ご理解を頂けるよう取り組んでまいります。

中川ゆう子の再質問

いま、2つの団地については、移転補償契約が成立しているということでしたが、実際にそこの方に聞いたら、保留という選択肢がなく、出ていくのか、ほかのところに移転するかの二者択一であったと。ですので、契約が成立したからと言って理解を得られたというのは、あの実態とあまりにもかけ離れていると私はお聞きして感じました。県の都合で今回公営住宅が縮小化されます。移転してくださいと、お願いをするのに、高い家賃をさらに請求するというのはどうなのか。そかも、相手は住宅弱者です。同意できないという背景には、こういうことが積み重なるからです。生活や住まいに負担を、不安を抱かせるようなやり方をしてはならない。真摯な対応が必要だと思いますが、もう一度お考えをお聞きします。

都市建築部長の再答弁

県では、縮小化を進める団地ごとに、移転完了に向け、一定の見通しを立てて、住民の皆様にスケジュールをお示ししております。今後も、住民の皆様の移転の決断に必要な時間的余裕を考えながら、丁寧な説明に努め、ご理解を頂けるよう取り組んでまいります。

 県営住宅の在り方について

全県営住宅のバリアフリー化・全面リフォームについて

中川ゆう子の質問

同じ県営住宅でも、岐阜市の中心部、金華地区にある白木町住宅や、名鉄田神駅ちかくの田神住宅の入居率は9割で常に人気の住宅です。また、県営赤保木住宅に隣接する市営住宅も非常に人気で高い入居率とのことです。全室1階が入り口になっている事が人気の理由ではないかというのが県担当課の見解でした。

入居率が低い住宅は、郊外の公共交通が不便な地域という立地上の課題に加え、古く現在の生活スタイルに合っていない間取り、網戸が無く暑い夏に窓すら開けられない、エレベーターがないなど、の課題があるようです。

そこでお聞きします。移転縮小化の発端である低入居率の原因を解消しないと、また何年か後に移転縮小化が避けられなくなり、それは大変残念なことです。入居率が低い住宅の課題を踏まえ、全県営住宅のバリアフリー化や全面リフォームを行うべきと考えるが、いかがでしょうか。

都市建築部長の答弁

県営住宅のバリアフリー化やリフォームの取り組みでありますが、これまで、バリアフリー化を目的とした段差解消や手すりの配置、また、居住性向上を目的とした浴室改修を実施してきたところです。これまでの実績としては、バリアフリー化を273戸、浴槽設置を1084戸、それぞれ行っております。

県営住宅を全面的にリフォームするとすれば、膨大な事業費が必要になるとともに、多数の入居者に一時的に移転していただく必要も生じるため、実施は困難と考えております。

引き続き、必要な改修を計画的に実施することで、県営住宅の質の維持・向上を図ってまいります。そのうえで、特にバリアフリー化を行った部屋については、高齢者、障がい者の方々に優先的に入居していただくよう取り扱ってまいります。

中川ゆう子の再質問

県営住宅の在り方について、全面リフォームについてもお聞きしました。

全面リフォームは困難だという答弁だったんですが、その結果として、入居者が減って、縮小せざるを得ない事態になっているわけなんです。

さらに、お隣の市営住宅は満杯だということを考えれば、リフォームをして入居者を増やすということも一つの手だと思います。全面リフォームをしないで縮小化だけ進めていく、このやり方では、移転を求められた方がまた引っ越しを求められる事態にもなりかねません。

先の見通しが立たないのではと思いますが、今後のバリアフリー化・全面リフォームについて、お考えを再度お答えください。

都市建築部長の再答弁

県営住宅については、既存ストックの長寿命化やバリアフリー化などの改修により有効活用を図ることとしており、現時点での全面的なリフォームの予定はありません。

空き家となった旧県営住宅の利活用について

中川ゆう子の質問

空き家のまま放置することはとうてい住民の納得は得られず、地域のまちづくりにも大きく影響します。

県営住宅や周辺の住民にとって住環境が向上するような活用を図っていくべきと考えますが、考え方と今後のスケジュールをお聞きします。

都市建築部長の答弁

今年度末の赤保木住宅及び宮代住宅の縮小化の完了により、初めて空き家住棟が生じることになりますが、県としましては、まずはこの利活用の方策を検討してまいります。

そのため、現在、ほかの都道府県における事例を調査するとともに、県庁各部局に対して、情報提供と意見照会を行い、加えて地元自治会に説明を行うとともに、住民の方々と意見交換会を開催し、ニーズの把握に努めております。

今後は、いただいたご意見を参考にしながら、検討を進めてまいりますが、利活用の方策が決定するまでの間、防犯及び生活環境の観点から住民の方に不安を与えることがないようしっかりと管理してまいります。

 国の住宅政策に対する課題と県の対応について

中川ゆう子の質問

国の公営住宅関連の予算をみると、新規建設への支援は非常に少なく、今年度の国の住宅関連予算のうち公営住宅に充てられる予算は1%ほどという状況のようです。民間ストックを重視する方針によって、公営住宅の重要性が軽視されているのではと感じるが、年収200万円未満の低所得世帯、子育て世代、年金暮らしの高齢者にとって、低廉な家賃の住宅に対するニーズは非常に大きいものがあります。

国の住宅政策の予算がこのような状況では、自治体がセーフティネットとしての公営住宅を充実させることは非常に厳しく、国の支援についてつよく要望する必要があります。

「住まいの貧困」の実態を正確に把握・分析し、県営住宅を「住まいは人権である」という考えのもとさらに充実させてほしい。国に要望するとともに県と取り組んでいただきたいと思うがいかがか。

都市建築部長の答弁

「住まいの貧困」というお話がありましたが、県においては、県住生活基本計画において、高齢者、障碍者などのよう配慮者に対する住宅セーフティネットの中心として県営住宅を位置づけるとともに、民間賃貸住宅についても、セーフティネット住宅としての登録拡大を図っております。

そのうえで、県としましては、県営住宅について、要配慮者の優先入居枠の設定を行うとともに、先ほども申し上げましたバリアフリー化をはじめ、計画的な改修を行い、住宅セーフティネットとして、質の維持と向上に努めてまいります。

そして、これらのかかる必要な予算については、この確保を国に対し、しっかりと要望してまいります。

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