中川ゆう子の代表質問と答弁をご紹介します。
中川ゆう子
長良川鵜飼の観覧船乗り場付近に作られたニジマスの管理釣り場は、長良川漁協が木曽川上流河川事務所より占有許可を受け、2月初めに営業を開始されたばかりでした。1月の漁業権免許の切り替えの際に、この場所にニジマスの管理釣り場を設ける規則変更が行われ、県が認可しております。
先日、増水によりニジマスが3000匹流出する事案が発生した際、木曽川上流河川事務所は撤去計画通りの対応ができていなかったとし、行政指導を行いました。国交省によりますと、報告を求めその内容をしっかり確認するとともに、河川管理上の確認だけにとどまらず、市民の信頼回復、合意形成ができているかについても重点を置いて確認したいとの意向でした。
非常に重要な視点だと思います。
この報道の中で、県からは「アユ漁に影響がないと考える」とのコメントが発表されていました。しかし、専門家によりますと、この場所はこの時期、ちょうど海から稚鮎が群れで遡上してくる場所であり、遡上のタイミングとこの流出の時期があってしまったこと、上流での計画的な放流とは状況が異なっていること、さらにその量が3000匹というこれまでにない大規模な流出となったことから、アユの遡上に影響する可能性も指摘されています。県のコメントには率直に違和感を覚えるところです。
また、水産庁の指針ではニジマスは「これ以上の分布拡大をしない」とし、対策が求められているところでもあり、こうした点から見ても、県の姿勢が問われてくるのではないでしょうか。
お聞きしたところ、この管理釣り場を作る最初のきっかけに県も関わっていらっしゃったとのことです。釣り人口を増やす、川に親しんで楽しんでもらいたいという思いは否定しませんが、長良川鵜飼の舞台を選定した点、鮎をはじめ食害の恐れが指摘される外来種のニジマスを結果的に流出させる事態になったことなど、県としても改めて見直すべきことがあると考えます。
ニジマス流出事案に対する所感と今後の対応は
ニジマスはなじみ深い魚ではありますが、産業管理外来種として位置付けられ、水産庁は県へも分布拡大防止を求めています。生態系への影響や遡上稚魚を捕食する可能性も指摘されています。「アユ漁に影響はないと考える」という県の見解が報道されていますが、今回の事態はもっと深刻に受け止めるべきではないでしょうか。お考えをお聞かせください。
また、清流長良川の鮎は世界農業遺産に認定されており、鮎はトップセールスの品目に掲げてきました。1300年の歴史を持つ長良川鵜飼とともに、岐阜の貴重な資源でもあります。今回の特定釣り場の取り組みは、市民の間から多くの否定的な意見が寄せられており、長良川に関わる幅広い県民の理解を得られて進められてきたのか疑問です。これまでの県の対応に関しても課題があったのではないでしょうか。
今後の対応について伺います。
答弁 知事
ニジマスは、大正10年に長良川と揖斐川で初めて放流されて以降、100年以上に亘って広く県内で漁業の重要な対象種として継続的に放流されてまいりました。現在、県内22漁協に漁業法に基づくニジマスの漁業権の免許、10漁協に管理釣り場の設置を認可しております。
これらの免許と認可にあたっては、漁業法の規定に則り、内水面漁場管理委員会での公聴会や審議、答申を経て、手続きを進めてまいりました。これは長良川漁協についても同様であります。
その後、長良川漁協は、国から河川法に基づく河川の占用許可を受けて、管理釣り場を開設いたしましたが、今回の事案は、増水によりニジマスの一部が施設外に流失したものであります。現在は、営業を中止し、施設は撤去されております。
今回の件については、2つの問題があるというふうに考えております。
1つは、管理釣り場の施設の運営管理の問題であります。この点については、水産庁の管理指針により、施設の管理者は流出しないよう管理することが求められており、県としても、これを指導・監督することとなっております。
現在、ご指摘にもありましたが、長良川漁協に対しては、河川の占用を許可した国土交通省木曽川上流河川事務所からも、今回の増水時の対応の経緯と課題について報告を求められているというふうに承知しております。
第2は、管理釣り場の設置場所の問題であります。長良川鵜飼の場所に開設し、流失事案が発生したことは、世界農業遺産として認定されている清流長良川ブランドのイメージダウンにつながりかねないと危惧しているところであります。
県といたしましては、今回の流失事案の発生原因を検証し、再発防止策を取りまとめてまいります。そして、県内の管理釣り場に対しても、指導・監督を徹底してまいります。
また、漁業法を所掌する農政にとどまらず、生物多様性を含め幅広い観点から対応していけるよう、県庁内関係部局間での情報共有と、関係者からの意見聴取を行うべく、県の体制の見直しを検討してまいります。
再質問 中川ゆう子
知事に2点、伺いたいと思います。
2つの問題があると。運営管理の問題と設置場所の問題、これはイメージダウンにつながるということだったんですが、私がここで気にしているのは、「アユ漁に影響ない」と言った県の見解のことなんです。
影響について、これは問題ないのか、本当に、そういうお考えなのかどうか伺いたいと思います。
これはもともとこの場所でやったことのイメージダウンというよりは、防ぐべきだった流出が実際に起きてしまった、計画的な放流と一緒に論じるのは矛盾しております。
更に、この時期この場所で流出したということが問題です。最初に質問の中でも申し上げました専門家の方の意見をご紹介しました。3000匹というのはサイズにもよるんですけれど、だいたい1900㎏ほどではないかと、非常にかなりの量なんです。上流で計画的に放流されているという規模とは比較できないのではないか、さらに昨日の質問でちょうどこの時期にアユの遡上が観測されたということでしたが、ちょうどこの2月下旬からこの場所というのは海からアユの稚魚がのぼってくる、群れでのぼってくる、そのタイミングなんです。そこで3000匹というこれまでにない規模のニジマスが放たれるということは過去にはなかったんじゃないかと思います。
だからこそ、「アユ漁に影響ない」と言い切ってしまうのではなく、むしろ清流の長良川のアユを守るという県の姿勢を私は見せてほしかったと思います。アユ漁への影響についてもしっかり注視していく、そういったお考えはないのか、伺います。
次に、今後の対応についてですが。
体制を見直しするということでしたが、やはりこれだけ市民の方から否定的な意見が寄せられるというのは、これは川に関わる多くの皆さんにとって非常に残念なことだったと思います。県の進め方自身も検証する必要があると思いますが、先ほど言われた検証、体制の見直しというのは、これまでの県の進め方についても検証されるのかどうか、今後の対応について伺います。
再答弁 知事
まず今回は手続き的に言いますと、これは漁業法の世界で、法的には進めてきたものでありますが、漁業法上はこのニジマスについては、産業管理外来種というふうに分類しておりまして、適切な管理、それから利用上の留意事項をきちんと設ける、こういうルールになっておりまして、別途水産庁が管理指針というものを設けております。
この管理指針の中で、先ほどちょっと申し上げましたが管理釣り場の管理について、まず管理者がしっかりと責任を持ってやりなさいと、それから都道府県は指揮・監督をしっかりやりなさいと、こういうふうに書いてあります。
原則はこれ以上、産業管理外来種の分布域の拡大を招く可能性があるような新たな免許は行わないことが望ましいという原則を掲げながら、個別の状況に照らしてその是非を慎重に検討するということで、その手続きについては事前に関係研究機関、岐阜県の場合ですと水産研究所と十分に相談するとともに、水産庁に連絡するというふうになっております。
今回あらかじめ水産庁にご相談をしたところ、「本件については、県の水産研究所の見解を添えて県の漁場管理委員会で判断してくれ」とこういうことで、県の水産研の方は「この区域では今のところ、ニジマスの再生産は確認されていない」と、それから「ニジマスが確認される場合があるけれども尾数は少ない」という見解でございまして、この見解も含めて内水面漁場管理委員会で了解を得たと。
ただし、「放流する場合には在来魚の繁殖保護に留意をすること」と、そして「管理釣り場では逃がさないようしっかり管理をするように」という留保条件を付けて今回漁業権の免許をを与えた、とこういうことでございます。
そうしてみるとまず、その管理釣り場という「閉ざさエリアできちんと管理をしなさいよ」ということがまず大前提としてあったわけでありますから、この部分が損なわれたということはやはり問題だったということです。そういう意味でなぜこういうことが起こったのか、いろんな観点から検証したいというのが先ほど申し上げたことであります。
それから、県の方として先ほどご指摘があったようなことを申し上げたのは以上のような手続きというか、考え方を整理して進めてきたものであるという趣旨を申し上げたということであります。
一方で、この漁業権の免許の問題とは別に、こういった問題はいろんな角度から検討する必要があるということで、生態系の問題、生物多様性の問題、あるいは文化、観光いろんな観点から検討する必要があるということであります。
これまで農政部のほうで漁業権の免許の問題として単独で取り組んできたわけでありますけれども、今回のこうした経緯とか、おっしゃるような様々な方々のご意見を踏まえて、県庁内にも、横断的に広く議論をする、そういう仕組みを作って、かつ、いろんな方のご意見も伺いながら慎重にこの部分についてやっていくという体制を組んでいきたいとそういうふうに、思っているところでございます。
再々質問 中川ゆう子
アユ漁に影響がないか、ということについては何もお答えになりませんでした。本来は、アユ漁に対しても影響があるかどうか分からないのでその点について注視していくというのが本来、県の姿勢ではないか、長良川のアユを守るという姿勢ではないかと思うんです。その点についてお答えください。
再々答弁 知事
まず、今回の管理釣り場に対する一連の手続きについては先ほど申し上げましたようにしっかりと釣り場として管理をされているという前提での、一連の手続き判断であったということが一方であります。それから、一般論として申し上げますと、水産研究所の基本的な見解は、もちろんこのニジマスは水生昆虫、小型甲殻類等への食害、渓流魚と産卵場所等が競合する可能性というのがあるということでございますが、ニジマスは全国的に漁業の対象魚とされ、県内でも100年以上にわたって河川に放流されてきたと。かつては繁殖・定着させようと研究が重ねられたことがありましたが、現在に至るまで県内では繁殖による定着やアユ漁への深刻な影響は確認されておらないと。また、河川に放流されたニジマスは、多くが速やかに釣りで漁獲され、当該漁場では夏には水温が上昇しニジマスが生育できない環境となることから長良川の生態系への影響は限定的と考えているというのが水産研究所の見解であり、内水面漁場管理委員会の皆様方のお考えというふうに私は理解しておるわけであります。
なお、今回の件については囲われた管理釣り場の管理という面で非常に残念なことが起こったと思いますし、しかしこれを機会に、しかもあの場所が清流長良川の鮎というという世界農業遺産の場所でもあるということで単に漁業権の問題とかいうことだけではなしに、幅広くいろんな観点から慎重に県庁横断的に検討をして判断、考えていくべきではないかというところは軌道修正していきたいという風に思っているわけであります。