中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

6月議会(2)国民健康保険制度改革について

2017年7月12日 12:53 pm
カテゴリ: 活動報告

討論6月議会_8

平成30年度からの国民健康保険制度の広域化・制度改革について、健康福祉部長にお聞きします。

国民健康保険料(または国保税、ここでは国保料という)は、世帯収入からみて限界を超える高さになっています。国保制度は、国民皆保険となるにあたり、自営業者など、他の医療保険に加入できない方が加入する医療保険制度としてスタートしました。現在では、年金生活者や非正規労働者が加入者の8割を占め、低所得者が多く保険料が高いという構造的問題が深刻になっています。どれほど深刻かというと、たとえば、岐阜市では、夫婦と子ども2人、総所得200万円の世帯の年間保険料は24万9060円。所得の1.2割を国保の保険料が占めていることになります。毎年国保料の通知が送られてくる6月は、多くの加入者の方が納付相談や減免の相談に窓口を訪れているのが現実です。

国民健康保険制度の広域化が議論され始めたとき、低所得者が多いのに保険料が高すぎるという構造的問題が議論の焦点になり、全国知事会はこの高すぎる保険料を「協会けんぽ並みの保険料にするために1兆円の国費投入」を求めていました。しかし実際には3400億円であり、高い保険料問題は解消されていません。
しかも、広域化によって、さらに保険料が引き上げられる可能性が出ています。
実際に保険料を課し徴収するのは今までどおり市町村ですが、大きく変わるのは県が1年間の医療費を算定、市町村から県への納付金額を決定し、市町村は100%納付が義務付けされる点です。H26年度の岐阜県の保険料収納率は92.68%です。足りない8%をどう補うかが問題ですが、一般会計からの法定外繰り入れや基金の取り崩し、または、保険料を割増しして課す、ということになります。また、医療費指数が高いほど県への納付金が高くなるため、市町村において医療費を抑制しようとする動きが加速しかねません。この広域化にあたり、県は運営方針を策定し、市町村における保険料の標準的な算定方法、徴収、医療費適正化の取り組みなどの事項を定めることになっています。

しかし、高い保険料が加入者の支払い限度を超えつつある現状をなんとかしようと、市町村では様々な予算措置を行ったり独自に取り組みをしています。
国民健康保険法第一条には「社会保障制度」であることが明記してあり、相互扶助や経済力で差別される制度ではないという国保法の趣旨からしても、市町村の取り組みは当然の対応だと思います。

(1)県が策定予定の国民健康保険協議会による運営方針の位置づけについて

健康福祉部長に質問

そこで1点目として、確認の意味も含め質問します。
国のガイドラインにもあるように、「都道府県国保運営方針」はあくまでも技術的助言であり、保険料賦課決定などの権限や予算を決定するのは、これまでどおり市町村にあると考えますが、今後策定される運営方針の位置づけについてお聞きします。

健康福祉部長の答弁

平成30年度以降の新制度においても、保険料率の決定、保険料の賦課・調整などの事務は、引き続き市町村の事務とされています。なお、改正国健康保険法におきましては、市町村は、県が定める国保運営方針を踏まえて事務を行うよう努めるものとされております。
また、新制度を持続的かつ安定的に運営していくためには、県及び市町村が保険者としての事務を共通認識の下で実施することが重要であると考えております。このため、同方針の策定も含め新制度への移行にあたっては、これまでも15回にわたり市町村の皆さまと意見交換を重ねてきたところですが、今後とも引き続きご意見を丁寧に伺ってまいります。

中川ゆうこの再質問

「市町村は運営方針を踏まえてつとめるもの」といわれるが、「技術的助言」とは、法的拘束力をもつものではなく、地方公共団体の自主性を尊重するものだというのが、国の見解。この国保運営方針は、こうした技術的助言でしょうか。

健康福祉部長の再答弁

先ほどご説明しましたけれども、平成30年度以降の新制度におきましても、保険料率の決定、保険料の賦課徴収などの事務は、引き続き市町村の事務とされております。
また、改正国保法におきましても、市町村は県が定める国保運営方針を踏まえて事務を行うよう努めるものとされております。このようなことを踏まえますと、これらの事務は、最終的には市町村の判断により行われるものと考えております。国の考え方と同じというふうに認識しております。

(2)市町村ごとの納付金及び標準保険料率の試算の公表について

健康福祉部長へ質問

市町村が保険料を決定するもとになる納付金については、昨年10月頃に国から事業費納付金・標準保険料算定管理システムが出され、各都道府県において試算がされています。
岐阜県においても、試算が行われていますが、標準保険料の試算結果は県民にも議会にも公開されておりません。広域化はすでに来年度のことであり、市町村や県議会での議論も必要ですし、なにより加入者に開かれたものであるべきと考えます。試算段階で決定ではないにしても、過去に実施されたものをふくめ試算結果を公表すべきでないでしょうか。お考えをお聞きします。

健康福祉部長の答弁

市町村ごとの納付金及び標準保険料率の算定は、基礎データを市町村から提供いただき、国が開発中の算定システムを用いて行っています。昨年度の2回の試算は、システムの検証が主な目的であり、その結果は各市町村に提供し基礎データの検証等に活用したところです。この試算は、平成30年度からの公費拡充分を含め試算方法が確定されていない段階のものであり、その確定後に行う算定結果とは大きな乖離が生じ得るものと考え、広く公開することは差し控えております。
今後、国により算定方式等が正式に示された後に、夏ごろに改めて試算を行い、その結果は県国民健康保険運営協議会にお示しするとともに、県ホームページで公開してまいります。

中川ゆう子の再質問

夏ごろに試算するということは、8月以降、秋の公開という話になります。すでに市町村では新年度予算の議論が始まっており、スタートまでもう1年をきっています。現段階で過去の試算を公開するべきだと思いますが。

健康福祉部長の再答弁

昨年度行いました2回の試算ですけれども、先ほどご説明した理由により、公表は控えたいと考えておりました。また、公表してほしいとの要望もこれまで伺っていなかったところです。
しかし、今後試算の前提条件を付すなど、県民の皆様の混乱を招かないように配慮した形での公開について、検討してまいります。

中川ゆう子の再々質問

試算の結果の公表は、現在試算されているものも含まれるのでしょうか。

健康福祉部長の再々答弁

先ほど申し上げましたとおり、昨年度行いました2回の試算について、今後試算の前提条件を付すなど、県民の皆様方の混乱を招かないように配慮した形で、公開について検討してまいります。

(3)保険料抑制のための市町村及び県の取り組みについて

健康福祉部長へ質問

広域化の議論の中で、高い保険料は構想的問題であるとされてきましたが、この保険料抑制のための取組についてお聞きします。
広域化にともなって国から3400億円が繰り入れられますが、市町村が法定外で繰り入れてきた総額には届いていません。実際にH25年、市町村の法定外繰り入れ3900億円ですので、広域化にともなって市町村が法定外繰り入れをやめると、保険料は引き上げられることになります。
現在の加入者の実態と高い保険料を考えると、市町村が赤字補てんや国保料引き下げのために実施する法定外一般会計繰入は、市町村の判断を尊重すべきと考えるが県の見解をお聞きします。合わせて、県としても市町村向けの財政支援策を実施する必要があると考えるが、いかがでしょうか。

健康福祉部長の答弁

市町村の国保特別会計は、原則として、必要な支出を保険料や国庫負担金などで賄い、単年度の収支を均衝させることが重要とされており、保険料全体を一律に引き下げるための一般会計繰入れは削減に努める必要があると考えております。このため、県の国保運営方針において、こうした繰入れを行っている市町村については、当該市町村と十分に協議を行ったうえで、その計画的・段階的な削減を図る取組みを盛り込むことを検討中です。
なお、県では、今後とも従来の市町村の財政力調整、低所得者への保険料軽減措置等を目的とした財政支援を行ってまいりますが、保険料全体を一律に引き下げるといった目的での財政支援は考えていないところです。

中川ゆう子の再質問

「市町村の法定外繰り入れは削減に努めるもの」とのことですが、平成26年4月6日の衆議院では、「自治体でご判断いただく」というのが厚労省の答弁でした。法定外繰り入れは、「市町村の政策的判断で実施するものについては必ずしも解消・削減するべきものではない」これが厚労省の見解です。今後、一般会計からの法定外繰り入れに係る市町村独自の取組みや判断は尊重されるのでしょうか。

健康福祉部長の再答弁

くり返しになりますけれども、新制度におきましても、保険料率の決定、保険料の賦課徴収などの事務は、引き続き市町村の事務ということでございます。
また、国保法に定める運営方針ですけれども、あくまでも努めるものということでございます。このようなことを踏まえますと、法定外の一般会計繰入れを行うことについては、それそれの市町村で最終的にはご判断いただくことということで認識をしております。
なお、全国で毎年3400億円規模の公費拡充、それから県から保険給付に要した費用を全額交付する仕組みがございますので、新制度移行後の保険料の上昇は、抑制される方向にある物と考えております。

(4)国民健康保険法第44条の減免制度について

最後に、国民健康保険法44条の減免制度の全権での周知と実施について質問します。
医療費の増大を抑えるため「医療費の適正化」が方針に盛り込まれますが、医療保険で最も大切なのは、早期の受診であり、誰もが医療を受けられることが大前提。

昨年、全日本民主医療機関連合会が加盟事業所における【経済的事由(じゆう)による手遅れ死亡事例調査】を発表されています。これによると、昨年1年間で経済的な理由で手遅れになり亡くなったかたは58件に上っているとのことです。少し事例を紹介させて頂きます。
60代男性。20代の長男・長女と同居。長男は聾(ろう)学校を卒業後、障害年金と失業保険受給。長女は派遣の仕事で収入は不安定。2015年2月から腰痛。そののち歩行困難となり、3月にA病院に救急受診。入院にて肝臓(かんぞう)がん、骨に転移と診断でステージ4。手遅れ状態。2016年1月逝去(せいきょ)。経済的に困窮していたため国保を所持していても受診が遅れた肝臓がん患者の事例です。
また、自営業者の場合、病気により営業を続けられないということは収入に直結しますので、治療費が払えず治療を受けることができないという問題に直面することもあります。
営業のための車のリースなどがあると、生活保護は簡単には受けられません。

こういったとき国保法第44条では、窓口で支払う医療費を減額、または免除することができるとされています。
2015年、岐阜市では初めてこの国保法第44条が適用されました。スナックを営むご夫婦ですが、妻の胃がんが分かり、病状が悪化、営業を続けられなくなりました。44条の適用申請をし、半年間適用され胃の全摘手術を受け、現在はお元気に活躍されております。
しかし問題は、この国保法44条が加入者も国保を扱う自治体職員にもあまり知られていないという点です。この方も何度も何度も交渉を繰り返し、時間と労力を費やしてやっと適用されたということでした。また、中には窓口で「そういった制度はない」という回答を受けた方もおられます。

健康福祉部長へ質問

県内では、一部負担金の減免制度について、取り扱い要綱がない市町村もあり、要綱があっても職員が知らず正しく加入者に伝わっていないなど、周知や運用が不十分な状態です。
生命に直結する問題であるため差があってはなりません。県内全市町村に要綱作成を呼び掛け、県として制度の周知に取り組む必要があるのではと考えますが、いかがでしょうか。

健康福祉部長の答弁

国保の一部負担減免は、国保法に基づき市町村の判断により行うことが可能ですが、一部の市町村では要綱の整備がなく行われていない現状です。また、この制度は要綱が整備されている市町村においても、減免を希望する加入者の確実な申請と市町村職員による的確な運用が必要となります。このため、県はこれまで、市町村職員に対する研修や現地指導の機会をとらえて、要綱の整備、制度の広報等について助言してまいりました。
今後は、これらの取組みに加え、県ホームページにおいても制度の周知を図るほか、要綱の整備がない市町村に対し、標準的な要綱例を作成し提供することなどにより、要綱の作成を働きかけてまいります。

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