中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

6月議会質問(2)ひきこもり支援について

2019年7月5日 4:56 am
カテゴリ: 活動報告

ひきこもり支援について

川崎市で、通学途中の子どもが標的になるというたいへん痛ましい事件がおきました。報道では犯人の家族構成や要因なども含めさまざま語られていますが、どんな理由であれ、これは無差別の殺人事件であり、決して許されるものではありません。

一方で、こうした事件で犯人がひきこもり状態だったという事がクローズアップされ大々的に報道されることには疑問を感じております。ひきこもりといってもそれは単なる表層の部分であり、実態は10人10色です。事件の真相からは離れた危険な議論に陥るだけでなく、不必要に偏見の助長や当事者・家族の不安が増幅される事態を生み出しています。

実際に、事件のあと、全国の支援団体には、家族や当事者からの相談が相次いだとのことです。

この問題の本質は、不安定雇用や貧困など社会的な要因によってひきこもり状態に陥っているケースが非常に多いにもかかわらず、いまだに本人の資質など個人の問題としてとらえられていることにあるのではないか、と私は思います。

いまだに、怠けや頑張りが足りない人という偏見があるが、厚労省の実態調査でも明らかなように、就労による挫折や自己肯定感の低さ、そしていつかは社会の一員として活躍したいと願っている当事者が実は非常に多いことなど、まずは実態を正しく把握することが必要です。
ひきこもりやニートが社会問題になったのは、一部、就職氷河期世代とも重なる部分がありますが、不安定雇用が増大した90年代後半から2000年代と言われています。働く現場では、過重労働により健康を害したり、過労自死が社会問題になりました。
中高年のひきこもりの実態調査で大半が就労経験があるという結果があるように、雇用環境や社会全体の変容の結果としてひきこもりが生じており、個人への支援に留まらず、社会的背景そのものに目を向けていく必要も感じているところです。
そこで2点お聞きします。

岐阜県では今年度、引きこもりの実態調査を実施されています。さらに今議会の提案説明で知事は、ひきこもりに対しての取り組みを強化する旨を語られました。

ひきこもり支援に対する行政の役割について

中川ゆう子の質問

申し上げたように、雇用環境や社会全体の変容が背景にあることが指摘されている。
こうした引きこもらざるを得ないような社会を変えるために知事には先頭に立ってほしいと思います。
行政が行う引きこもり問題への対策として今何が必要と考えるか。

知事の答弁

5月28日の神奈川県川崎市において発生しました事件につきましては、私からも亡くなられた方々やご遺族の方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、負傷した方々の一刻も早い回復をお祈り申し上げえる次第でございます。
この事件の事実関係はまだ明らかにされておらず、安易にひきこもりと結びつけることにはあくまで慎重であるべきだと考えております。このことを踏まえたうえで、ひきこもり支援についてご答弁をさせていただきます。

近年、いろいろな生きづらさを抱えている方が増えてきており、ひきこもり状態の方も含め、ひとりひとりが尊重され、ご本人にふさわしい形で参加が可能となる社会を実現していくことが重要であると考えております。
ひきこもりは、学校や職場といった社会に居場所がなくなるところから始まり、いったんひきこもると自己否定感を抱き、この問題をだれにも打ち明けられず、会社との接点を喪失し、ひきこもりの状態がその結果としてさらに継続していくということになるといわれております。その原因は、例えば、学校での不適応、就職の失敗、職場での人間関係、短期離職など様々でありますし、生きづらい複雑な社会環境が背景となっていることもあり、必要な支援内容も、福祉、教育、就労など多岐にわたると思います。
このため、本県では、平成28年に、鷺山のぎふ清流福祉エリアの中に「ひきこもり地域支援センター」を設置したわけでありますが、このセンターにおいて、社会福祉士などの資格者である「ひきこもり支援コーディネーター」が、ひとりひとりの状況に応じて関係機関と連携し、具体的な支援につなげてきております。

対応事例を例えばご紹介しますと、ひきこもり状態になって12年経過した40代男性のケースでは、センターがその家族との面談を繰り返す中で、1年後にようやく家族とともにご本人がセンターに来初できるようになったと。そして、そのうえで、センターの調整によって、県社会福祉協議会が行う就労に向けた相談支援を受ける。そして現在、企業見学、就業体験、模擬面接といったことに取り組んでおられるということでございます。

このように、ひきこもり地域支援センターでは、ひきこもり支援拠点としての機能の向上に努めてきております。引き続き、ひきこもりの背景に、先ほども申しあげましたが、生きづらい複雑な社会環境といった、社会的問題があることを十分に認識をし、関係者間で連携を強化してまいりたいと思っております。

また、今後の県の取り組みとしましては、議員からご紹介のありましたように、県内のひきこもりについてしっかりとした状況調査を行いたいと思っております。県内の状況につきましては、これまで相談支援機関を対象とした調査などで一定程度は把握しておりましたが、網羅的な把握にまでは至っていないということでご会います。今回は、民生委員4千人の協力をいただいて調査を実施することにしております。この調査では、民生委員に、プライバシーに配慮しつつ、可能な限りひきこもり事例を丁寧に把握していただき、その情報を、ひきこもり地域支援センターに集約し、分析をするというふうに考えております。

今後、その分析結果を踏まえ、さらなる支援策を検討してまいりますが、ひきこもり経験者が自らの経験を生かして行う、いわゆるピアサポート支援でありますとか、ひきこもり支援に取り組むNPOと連携した、社会における居場所づくりなど、ひきこもり状態にあるひとりひとりに寄り添った、息の長い支援が必要であるとの姿勢で取り組んでまいりたいと思います。

中川ゆう子の再質問

今どこに行っても人口減少で担い手不足だという話があるが、実際には調査で明らかになったように、60歳以下のひきこもり状態の方が全国に100万人おられる。担い手がいないといっている地域にもそういった方々がおられる。

ひきこもりに対し以前は怠け者などといった見方があったが、さまざまな研究と調査、実態把握によってそうではないということが明白になってきましたが、まだ認識として、一部の支援機関や支援団体までしか理解が広がっていない。当事者、家族にみなさんはそういったことを敏感に感じとって、後ろめたさを抱えながら長期化につながっている。行政の役割として正しい理解を地域の隅々まで拡げてもらうことを果たしてほしい。

知事の再答弁

先ほどもご答弁申し上げましたけれども、就職氷河期の問題であれ、ひきこもり支援の問題であれ、一方で一人一人の事情・状況に丁寧に寄り添うという側面と、その背景に社会的な背景といいますか、社会問題があるんだ、こういう認識をしっかり持って、双方向をにらみながらやっていく必要があると、こういうふうに思っているわけであります。その点については、いろいろな機会があることを県政としてもしっかりと見据えていきたいと思いますが、特に国との関係でいいますと、ちょうど岐阜県は先んじて第二弾の地方創生戦略を発表して今年が初年度になったわけでありますが、岐阜県の場合には明らかに、「まち、ひと、しごと」といいますけれども、人といいますか、人を大切にする、人を育てる、人材を育成するというところに力点をおいた政策体系を作ってきておるところでありますが、国も今、少し時間的には遅れて第二ラウンドの戦略の議論を始めたところでありますが、わたくし自身、有識者会合のメンバーでありますので、「まち・ひと・しごと」という順番について、まずは人ではないかということで色んなことを申し上げておりますし、かなりそこのところは、この有識者会合では浸透してきているのではないかと。何となくまず、町の魅力があれば人もそこに留まるし、仕事もやってくるという、もちろんいい循環を作ろうというところではあるんですが、何となくそういう順番で第一ラウンドは考えてきたきらいがあるんですが、私はまず人だということを強く今、申し上げているところでございます。

公的支援の充実に向けた今後のとりくみについて

中川ゆう子の質問

先の事件の報道を見ると、当事者や家族が社会的に孤立し、公的な相談窓口や具体的な支援にまだまだつながっていないことが浮き彫りになりました。
さらに、内閣府の調査では40才から64歳のひきこもり状態の方が61万人という推計が出され、引きこもりの高齢化、長期化が鮮明になりました。

県においてはひきこもり地域支援センターの開設から3年になり、さまざまな取り組みを進めて見えるとお聞きしています。が、いまだに多くを民間の支援へゆだねられており、公的支援の充実が求められています。
今後どのように取り組んでいかれるか、お考えをお聞きします。

健康福祉部長の答弁

ひきこもり状態にある方やそのご家族から、早期に相談いただき、適切に支援機関につなぐ体制を構築するため、ひきこもり地域支援センターを開設し、相談対応を行うとともに、連携体制の構築、普及啓発などに取り組んでまいりました。

特に、相談窓口の周知については、市町村やNPOを含め各種支援団体の取り組みを掲載したガイドブックを作成し、教育や医療の関係機関にも送付するとともに、啓発カードをコンビニエンスストアなどで配布してまいりました。

今後は、市町村に対して、相談窓口の設置や訪問支援など早期から個別支援を行う体制を整えるよう働きかけるとともに、センターが中心となって、圏域別の会議を開催し、公的機関と支援団体との連携体制の構築を支援してまいります。

また、市町村などの担当者に対し、ひきこもり支援にかかる基礎知識や個別事例検討の進め方についても研修を行い、身近な地域でのひきこもりの公的支援の充実に努めてまいります。

中川ゆう子の再質問

地域支援センターの体制は職員2人。充実には職員増が欠かせないと思うがお考えは。

健康福祉部長の再答弁

ひきこもり地域支援センターでは、平成28年6月に県精神保健福祉センター内に設置し、専門職2名を配置しまして、相談のほか、支援機関の連携体制構築などに取り組んでまいりました。

今後の職員の体制を含むセンターの体制につきましては、今年度実施する調査の結果を踏まえまして、さらなる支援を検討する中で、センター全体の業務を点検しながら検討してまいりたいと考えております。

Pocket

↑ページトップへ行く