日本の4年制大学の学費はこの数十年で急激に増加しています。文科省によると、1985年と2013年で比較した場合、私立大学では約91万円から131万円、国立大学では約37万円から82万円と2倍以上です。しかし児童のいる世帯の平均所得はそこまで上がっておらず、足りない学費や生活費をまかなうために今や学生の2.6人に1人が、奨学金を利用しています。
学費は親や家族が負担するものという声があるそうですが、経済的理由で進学をあきらめる高校生、中退せざるを得ない大学生は後を絶たないのが実情です。「2012年 高校生保護者調査」では、経済的理由から4年制大学への進学を断念する高校生は年間2万人に上るとされています。「大学進学と学費負担構造に関する研究」によると、経済的理由で断念した中には、給付型奨学金があれば進学してほしかったという方も一定数おられることが明らかになっています。
国では給付型奨学金が実施されるが、対象者は住民税非課税世帯と、わずかであり、進学者全体の約2%しかいきわたりません。実態からみて不十分です。 世界では、高等教育を重視し、学費の無償を維持、学費を徴収しても給付奨学金とセットで学生を支援し、大学への進学率が上昇している傾向があります。高い学費にも関わらず給付奨学金がないのは先進国(OECD)のうち日本のみで、大学進学率も先進国で平均以下となっているのが現状です。
県では、昨年春に、Uターン就職の学生を対象にした清流の国ぎふ大学生等奨学金が創設されました。この奨学金には返済免除の規定があり、多くの方に喜ばれ、来年度は枠も拡大されるとのことです。一方で、この奨学金は県外で下宿することが条件となっているが、ひとり親家庭や経済的に厳しい世帯の場合、下宿すらきびしく、日々のバイト代を家の家計にいれているような事例もあります。実際、日本学生支援機構の調査でも、自宅通学の平均生活費は年間約37万円なのに対し、下宿は約107万円。下宿する経済的余裕のない世帯に対しては、貸付金や従来の返済が必要な奨学金しかなく、最も支援が必要な家庭に対する支援のあり方として、矛盾が生じています。
中川ゆう子の質問
返済免除規定がある清流の国ぎふ大学生等奨学金が大変好評です。本来はどこで学ぼうと、どこに就職先を選ぼうと差があってはならないものです。本来の奨学金の主旨に基づき、岐阜県内の皆が安心して学べるような支援を行うべきだと思いますが、給付型奨学金創設の必要性についてどうお考えでしょうか教育長の答弁
大学には全国から学生が集まることから、奨学金制度については、全国組織である日本学生支援機構が実地しており、県教育委員会の奨学金はこれを補完するものとなっております。また、本県の奨学金は貸与型であることから、県民の負担は最小限の制度となっていますが、仮に給付型奨学金を実地するのであれば、県民負担が増大するため、政策目的をより明確にする必要があります。教育的見地から考えますと、基本的には全国統一された制度とすべきではないかと思います。国においては、来年度予算で、日本学生支援機構が行う奨学金に、低所得者に対する給付型奨学金制度の一部先行実施が盛り込まれており、さらに制度の充実が図られる見込みです。県教育委員会といたしましては、国における今後の施策展開を注視して参りたいと考えております。
中川ゆう子の再質問
給付型奨学金の創設について教育長からお答えをいただきました。必要性については否定をされなかったということだと思います。ただ、国の動向を注視するということですが、今、教育委員会が行っている返済する要件がある教学金ですが、実際に奨学金の返済については、経済的に困窮している場合は返済猶予というものを設けております。そしてこれは、期限を付けないという、国がやっている奨学金とも違う思い切った決断をされております。苦しんでいる方にとっても非常に重要なことですし、今起こっている問題を正面から受け止めた取組ではないかと私は思いますが、その一方で、これは事実上将来的に返済がされなかったら返済免除となるんではないでしょうか。給付型奨学金の必要性を一定認めたことになるんだと私は思います。必要性について伺いましたが、いよいよ検討段階に、県としても入るべきだと思いますが、もう一度お考えをお聞かせください。
教育長の再答弁
くり返しになりますが、大学生に対する給付型奨学金につきましては、教育的見地から考えますと、基本的には全国統一された制度とすべきではないかと考えております。本県教育委員会の奨学金につきましては、広く大勢の方に、大学生だけではなく高校生にも利用していただくということで考えております。議員もご指摘になりましたように、大学生に対する奨学金を利用しやすくするための工夫というのは何点がしております。議員のご説明がありましたように、平成24年度から、困難な経済状況な方へは返済を猶予しておりますし、平成27年度からは、通常は大学進学後、7月に貸与決定していたものを、高校在学中に内定するというようなことも行っております。また、来年度からは、2名必要だった連帯保証人を1名とするように改善を加えて、利用していただくような工夫をしておるところでございます。