2016年3月15日 8:20 am
カテゴリ: 活動報告
妥当性と庁舎機能のあり方を問う
Q、中川ゆう子
県では、今年で築50年を迎える県庁舎について、平成26年度から本格的に再整備に向けた検討が進められています。1月15日に発表された基本構想案では、基本方針、新庁舎に求められる性能、備えるべき機能、規模、事業費、財源、今後の進め方などがまとめられています。建て替え場所は現庁舎敷地内、規模はふれあい福寿会館の現地機能も移転し、現在の約1.6倍という事です。3月3日には、パブリックコメントで出された意見が一部反映され、議会棟・行政棟に加え講堂や現地機関の執務機能、警察機能が入る県民サービス棟を新たに設ける案が発表されました。今年度内に構想をまとめるとのことですので、できるだけコンパクトでシンプルな庁舎に、という立場で構想案について財源、時期、規模、今後の進め方の4つの観点から申し上げます。財源は平成25年3月から積み立てが始められている「県有施設整備基金」が充てられると書いてありますが、建設費は新庁舎建設工事だけで500億円から550億円と試算されており、新聞報道によるとそのうち250億は新たな借金、県債でまかなうとあります。また、新庁舎建設以外の移転、現庁舎の取り壊し、外構工事の費用など一連の事業費はここには含まれておりません。先ほどの質問で申し上げましたが、県債発行には慎重にすべき、と申し上げたいと思います。
次に建設時期ですが、平成30年度に建設工事の入札と契約、実際の建設工事は31年度から33年度と想定されています。この時期は東京オリンピックの建設ラッシュ時期と重なります。すでに全国的に資材や人材不足、人件費高騰が懸念され、この時期は少なくとも1割は増えるとも言われており、建設費の増額が予測されます。庁舎の建て替えの必要性は否定しませんが、時期については再検討する必要を感じます。
本格的な人口減少社会を迎えた今、問題は建設費や多額の県債発行だけでなく、大規模な建物は今後の維持管理費の負担も大きくなるということで、規模について申し上げます。現況面積にくらべ規模が拡大されるものが危機管理部門のほかにいくつかあります。執務室は、確かに職員の執務スペースは狭い印象があるのでやむを得ない部分もありますが、本庁と行政棟に移転する現地機関合わせて現在の1.4倍、エントランスホールや展望ロビーの新設で現在の9.8倍、講堂・特別応接室の新設で迎賓機能が5倍などで、全体の総床面積は先ほど申し上げたように1.6倍となります。現庁舎の建設時と時代背景も今後の人口見通しも異なり、本格的な人口減少社会を迎えると県自身も推定しています。規模についても将来予測を踏まえたうえで検討すべきではないでしょうか。
具体的に2点、提案します。迎賓機能として「各種式典、レセプション、国内外からの賓客対応のために講堂・特別応接室を新設するとありますが、実際に現在行われている行事をベースにどういった行事が迎賓機能で想定されるのか、一覧を提供していただきました。平成27年の一年間で行事は302回。うち、辞令交付式も含む式典やレセプションの実績は年間33回、約1割でした。行事のほとんどは会議やセミナーであり、迎賓機能というより、メモが取りやすく明るい照明の広い会議室に県産材など岐阜らしいものを加える程度が一番機能的で維持管理しやすいのではないかと率直に思うところです。現在はレセプションのような行事は民間のホテルなどを利用されているとのことで、県庁から離れていることがネックとお聞きしました。しかし、金華山、長良川といった岐阜県のすばらしさをアピールできる景勝地でもあります。必要な時に必要な民間の力を借りるという考え方も必要かと思います。
2つめです。構想案では、現在のふれあい福寿会館や総合教育センターの現地機関を県民サービス棟に集約化するとなっていますが、その結果、周辺施設には空きスペースが生じることも明らかになっております。そうであるならば、新たに県民サービス棟を新築するのではなく、機関の再配置など検討し、ふれあい会館など既存の県有施設を県民サービス中心の建物として活用することも可能かと思います。もともとこのふれあい福寿会館は県民のふれあいと交流の場を目的として平成5年に竣工されたと聞いております。新庁舎の構想に記載してある、会議室、展望スペース、レストランなどと同様の機能も備わっております。
まちづくりや今後の進め方について申し上げます。この県庁舎再整備の問題は、単に建物を建てるだけではなく、今後約100年間岐阜県の行政サービスをどうしていくか、どういったまちづくりを進めていくかといった問題だと私は認識しています。特に県職員の通勤時の交通量の多さに対し、地元の見守り隊の方などから心配する声もあると聞いています。これから100年と考えた場合に、自家用車から公共交通機関への転換は避けて通れません。
これまで県は昨年9月に県民に意見募集を行い、今年1月にはこの構想案についてパブリックコメントも実施されていますが、県民にとってそういった情報は県事務所の窓口や県ホームページなどでないとなかなか得られないというむずかしさもあります。ぜひ今後、庁内や県民と問題共有してほしいものです。
(1)既存施設などの活用や、整備時期の再検討による建設費などの抑制に対する基本的な考え方について
知事へ質問
新庁舎の構想については、申し上げたように既存建物の活用や民間施設の利用で過度な機能を抑え、できるだけ小規模なものとし、時期の再検討を行う事で、建設費や維持管理費を抑制できると思いますが、基本的なお考えをお聞きします。知事の答弁
これまでも有識者会議、あるいは県議会特別委員会におきましても、様々な観点からご議論をいただきました。また、県民の皆さまからのご意見もいただきながら検討してまいったところでございます。こうしたことを踏まえて、新庁舎の規模については、後ほど総務部長から答弁させますが、現庁舎が抱える課題を解消し、県庁舎が備えるべき機能、ニーズ等を満たすために必要な面積を積み上げたものでございます。例えば、危機管理スペースにつきましては、専用の災害対策本部員室や食料・物資備蓄庫の新設、さらには、関係機関が一堂に会し業務を遂行するためのスペースを確保することとしています。また、県民の皆さまが、集い交流できるような場も必要との意見をいただいておりまして、そうしたエントランスホール、ロビーも設けてまいりたいと考えています。
なお、議員ご指摘の通り、県の人口は減少傾向にありますが、例えば防災対策、道路・下線管理などの部門のように、人口の減少が行政需要の減少に直接つながらない事務や、国民健康保険の運営のように新たに加わる事務もございます。また、人口も短期間に急減するという性格のものでもございません。そうしたことから、現職員数をもとに、必要な規模を想定しておるということでございます。また、県の既存施設の活用につきましては、既に岐阜総合庁舎を平成24年度で廃止し、岐阜地域の現地期間を県庁周辺のふれあい福寿会館等に分散していることによって、かつての総合庁舎のように現地期間の連携や事務スペースが十分確保できていないというのが実情でございます。こうしたことから、県議会の特別委員会をはじめ各方面から、岐阜地域の現地期間及び警察庁舎の外にある交通部門などを集約し、行政効率を高めるべきであるというご意見もいただいております。こうしたことから、このような機能の整備も基本構想案に盛り込んでいるところでございます。
また、民間活用ということもおっしゃっておられましたが、県庁舎を整備するにあたりましては、原則として本来行政として持つべき機能をきちんと確保するというところから出発すべきではないかと思っております。新庁舎の建設スケジュールにつきましては、現庁舎が、建物や設備の老朽化が激しいことから、平成31年度の着工を目指しております。なお、オリンピックによる関連施設の建設の影響が、とのご指摘がございました。着工予定の平成31年度までには、オリンピック関連工事はほぼ終了しているのではないかと考えております。
知事へ再質問
県民サービス棟は、現庁舎を取り壊してから建設すると聞いており、着工時期はまだ決まっていません。そのため、計画を急ぐことなく、使える建物を十分に活用できないかなどをしっかりと見極め、使える既存施設は活用をしていく、というのが必要な考え方だと思いますが、いかがお考えでしょうか。知事の再答弁
新庁舎について使える建物を活用すべきだというご意見でございますが、使えるところがないから、どう設置をするかということで苦慮しているのが正直なところです。先程の答弁で申し上げましたように、岐阜総合庁舎を閉じた後、あそこに入っていたもろもろの施設を全部この周辺にもってきたわけでございます。そしてぎゅうぎゅう押し込んで何とかやりくりをしているわけでございますが、実際に、例えばふれあい福寿会館ひとつをとりましても、行政用の建物ではありませんので、使い勝手の悪さもありますし、そもそもたいへん狭いと、あるいはバラバラでなかなか行政効率も上がらないということで、いろいろな方々がこれで本当にいいのかということで、ご意見をいただいているということであります。また、総務部長が答弁すると思いますが、迎賓という言葉に随分こだわりがあるのかもしれませんが、講堂1つ、特別応接室1つ、応接室3つ、その応接室の控室が3室、これだけを迎賓機能と言っているわけでございまして、これで本当に十分かという議論もあり得るかと思っております。したがって、ないところにどういうふうに必要なものを設置しようかということで、やってきているということは、ぜひご理解をいただきたいと思っております。それから、県民サービス棟は本体を壊してからだから、ゆっくり考えればいいというご質問には、新しい建物が出来たら、今の本体に入っている部隊がそちらに入る、そちらに入ればただちに、今の本庁舎を壊して県民サービス棟に取りかかるということで、一つの流れの中で、全体像を今からきちんと整理をしておいて、お示しをして、進めていこうということでございますので、この部分の議論を先送りにするというわけにはいかないのではないかというふうに思っております。
それから、民間活用ということで、いろんな民間の施設を現に利用しているわけで、私も否定はしませんけれども、一日に2往復、3往復、長良とここを行ったり来たりするということで、私自身もそうですけれど、スタッフあるいは多くの方々、どれぐらいの行政コストがかかっているかということについては、正直申し上げまして、大変痛感しているところでございまして、本庁舎について、今のままの状態にしておくわけにはいかないのではないかというのが、私の正直なところです。
知事へ再々質問
ふれあい福寿会館に今置かれている行政機能を新本庁舎の行政棟に移せば、その分だけふれあい会館側に空きが生まれるということになります。他の施設にしてもそうで、わざわざ県の施設で空きスペースを新しく作ってまで、やるべき規模なのか、考え方をお聞かせください。知事の再々答弁
具体的にどこのスペースをどう使うかという議論は、ここではするつもりはございませんが、いろんなご意見等については、いつでもお出しいただければと思います。別に無駄なスペースを放っておこうというつもりもありませんし、先程申し上げましたように、行政棟、県民サービス棟、そして周辺の施設、全体としてどういうバランスで、何をどう設置をして、そしてどう使っていくのかについて、全体にバランスのとれたものをつくっていくのが、私の基本方針でございますので、その方針に照らしても、もし無駄だと思うところがあれば、それはご指摘をいただきながら、議論を深めていけばいいと思っております。よろしくお願いします。(2)延床面積の検討根拠と迎賓機能の必要性について
総務部長へ質問
総床面積の見積もりは、総務省や国交省の基準などさまざまなものを参考にされたとおもいますが、どのような根拠で検討を進めておられるでしょうか。また、迎賓機能については、さきほど申し上げたように使いやすく維持管理しやすい会議室が適切だと思います。迎賓機能が必要な場合は県有施設や民間のホテルなど既存・民間の建物の活用が可能だと思うがいかがお考えでしょうか。総務部長の答弁
延床面積でございますが、まず、危機管理スペースにつきましては、さきほど知事が申し上げました、専用の災害対策本部員室などに加えまして、災害時に利用する大型映像モニターや宿直室の設置に必要な面積を確保しております。執務室につきましては、想定人員を現職員数の2,400人とし、一人あたりの面積は、最近建て替えた他県の県庁舎や国の庁舎面積算定基準等を参考に、約7.8平方メートルとしております。また、県民サービス機能につきましては、パブリック・コメントなどを踏まえまして、エントランスホールや展望ロビーを新設するほか、現在不足しております県民相談スペースについても拡充をしております。加えまして、議会棟につきましても、エレベーターが設置されていないなど、バリアフリー化が十分でないことや、委員会室の傍聴スペース不足していることから必要な面積を確保しております。このほか、庁舎各階への多目的トイレの整備や、周辺県機関の集約などによりまして、新庁舎としての延床面積は89,000平方メートルとしております。
次に、迎賓機能の必要性につきましては、現在、県の重要な式典やレセプションなどを行うためのスペースがないことから整備するものです。民間施設の活用といったご指摘をいただきましたが、ホテル等を借りた場合の費用負担の面や、県庁周辺に民間施設がないことから、会場までの移動に伴う時間的ロスなどを考慮し、新庁舎に整備することとしております。なお、こうしたスペースは会議室としても活用できるものとしたいと考えております。