影響と問題点を問う
Q、中川ゆう子
午前中に国枝議員も取り上げておられましたが、地域医療構想とは都道府県に対し策定が求められているもので、岐阜県でも素案が公表されましたので、質問します。これは、現在の「病院完結型」医療から「地域完結型」医療へ医療の転換をすすめるとする国の医療改革として、いわゆる「医療・介護総合確保推進法」の医療法で定められました。しかし、そもそも医療の充実ではなく、医療費削減からスタートしているのが問題であり、医療改革というならば、いかに医療を充実させられるか実態からスタートすべきです。
具体的にはこの地域医療構想の中心課題は、病院の病床の削減と再編です。病床とはいわゆる病院のベッド数のことです。国のガイドラインに基づいて都道府県は、診療密度が最も高い「高度急性期」から早期安定化に向かう「急性期」、リハビリなど在宅復帰を目指す「回復期」、長期にわたる入院である「慢性期」ごとに必要なベッド数を設定。現在の県内のベッド数がこの必要量を超えていれば、都道府県が設けている「協議の場」において協議を行う、とされています。平成27年6月の第一次報告によって、全国で15万から19万床の削減が見込まれていることが明らかになりました。
岐阜県でも現在の病床数、約18,300床に対し(必要病床数は15,263床。)2025年の必要病床数は14,978床とされ、現在より3,000床のベッド削減が素案で示されています。しかし、この国が定めた必要病床数の算定には、重大な欠陥があります。実際の入院患者数で推計されていますが、ここには潜在的な医療ニーズが考慮されていないことです。国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査に、過去1年間において、受診が必要だと思うのに医療機関に行けなかった経験の有無についての調査結果があります。それによると、回答者21,173人のうち、何らかの理由で14.2%が必要な医療機関受診ができなかったことが明らかになっています。この間、過重労働による多忙化、所得や年金が減る中で、窓口の自己負担が増えるなど、医療にかかりにくくなっている現状があります。こうした層が、必要な医療を受けられるよう施策に取り組むことが大事であり、ニーズをない物として病床数を試算することは本末転倒です。
また、各病床において、高度急性期75%、急性期78%、回復期90%、慢性期92%と非常に高い稼働率を前提にしている点も危険です。患者数は季節や災害、感染症の流行によって一気に変化すると言われており、空いているベッドがほとんどない状態は医療現場の実態に合っておりません。昨年度の県総合医療センターにおける救命救急センターに救急外来で搬送された方で、応急処置のあと他の病院に入院のため転送されたという患者は151名に上っているとのことです。現状でさえ、こういった事態が実際に起こっており、受け入れた医療機関として責任を果たしていけるのか、疑問になります。これ以上の削減は、受け入れ病院を必死にさがす現場の苦労、患者の不安をさらに広げることになりかねませんし、加えて、周辺の小規模病院のベッド削減が行われれば、転送先もなく治療が遅れたり、たらいまわしの状態をつくり出すことになります。具体的に病床数ついて申し上げます。急性期病床が半減され回復期に転換されますが、急性期は需要が多い病床だと感じます。診療報酬の面でも回復期にくらべ多様で高いクオリティの医療が可能であると医療現場からも指摘がありますが、今後の救急医療体制や診療報酬が手厚くない回復期に転換する事での病院経営への影響を考えると不安は尽きません。
また、慢性期病床は、現時点で今のベッド数は本来必要なベッド数より780床足りていないのですが、2025年にはさらに今より約1,000床削減されることになっています。これは在宅化を想定したものですが、たとえば飛騨地域などは面積が広大であり、訪問診療には無理があり非現実的。現状でも医師、介護、看護体制が不十分であり、今以上、介護や看護のため家族が離職せざるをえない結果になるのではと、思います。
(1)地域の特性や実態を考慮した丁寧かつ慎重な対応について
健康福祉部長へ質問
国の方針ではありますが、実態や地方ごとの特性(飛騨など)を考慮されていない一方的な削減だと感じられ、私自身の意見としては見直すべきと考えます。これまで各圏域で丁寧に地域医療構想調整会議を開催され意見を集約されてきましたが、現場の受け止めはどのようであったでしょうか。また、今後も岐阜県の現状を丁寧に掴み、慎重に対応すべきと思うがいかがでしょうか。
健康福祉部長の答弁
圏域ごとに拠点病院の院長や地域医師会の代表などに参画いただいております地域医療構想調整会議において、地域の実情に即した様々なご意見をいただきながら議論を進めてまいりました。また、県病院協会と協働して。各圏域の病院に対して、地域医療構想の趣旨を周知し、意見交換を行う場を設けているところです。議論の過程において、急性期病床の必要性や在宅医療への移行といった大きな方向性に対しては、大方のご理解を得たものと考えております。今後、パブリックコメントを実施し、更に広く県民の皆様から地域の実情を反映したご意見を伺ってまいります。また、策定後も地域医療構想を固定的に捉えるのではなく、必要な都度、見直しを行い、継続的な丁寧な議論を行ってまいります。
健康福祉部長へ再質問
診療報酬における国の政策誘導について、しかるべきタイミングでものを言いつつ地域医療構想を運用してほしいと考えますが、がいかがでしょうか。
健康福祉部長の再答弁
適切な医療提供体制を構築するに当たりまして、診療報酬改定の方向性につきましては、地域医療構想の方向に沿っているか、充分な関心を持って注視してまいりたいと考えております。
(2)高齢化に対応した医療水準の維持に対する見解について
健康福祉部長へ質問
さきほど急性期、慢性期病床について申し上げたので、それを踏まえてお答えいただきたいと思います。岐阜全体でも3,000病床の削減。そもそも現在の稼働病床は、医師不足や潜在的医療ニーズを踏まえていないことは先ほど申し上げましたが、このさき2025年には団塊の世代が75歳を迎え、その10年後、2035年には3人に1人が高齢者という高齢者率がピークをむかえるという時代です。当然医療を受けざるをえない方が増えるのは明らかであり、病床数の目標値をみると現在の医療水準を維持できないと感じるが、いかがお考えでしょうか。
健康福祉部長の答弁
地域医療構想では、国の推計方法に基づき、現在の病床区分ごとの入院患者数を基に、将来の人口推計を性・年齢別に考慮して2025年の必要病床数を推計しております。将来の人口推計では、県全体の人口が減少し、子どもや現役世代の医療需要が減少する見込みである一方、高齢者は今後も増加する見込みとなっています。これに伴い、肺炎や骨折など、高齢者に多い疾患の増加により、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する回復期病床の需要が増加する推計となっております。こうした方向性については、5圏域ごとに開催している地域医療構想調整会議においておおむね理解されており、今後、急性期病床から不足する回復期病床への転換を進めることで、バランスの取れた医療水準を維持していくものと考えております。
健康福祉部長へ再質問
病床を病院ごとに区分して行くということは、例えば急性期から回復期に移る時など、そのたびに転院しなければならないおそれもあります。病院を転々としなければならない患者や家族の負担について、対応はどのように検討されるでしょうか。
健康福祉部長の再答弁
必要病床数の推計値については、国のガイドラインに沿って一定の過程を置いて計算した一つの指標、参考値としての位置付けです。したがいまして、推計値を一つの参考としながら、地域の実情に応じて、県、医療関係者らが話し合いを持ちまして、将来の医療需要の変化の状況を共有して、それに適合した医療提供体制、すなわち病床数をどうするかということを求めていくものでございまして、それへの具体的な取組みも、あくまで自主的な取組みが基本になっております。一方的な削減を押し付けるものではないと理解しております。
(3)2025年の必要病床数の位置づけと県の対応について
健康福祉部長へ質問
2025年の必要病床数の位置づけと県の対応について。国のガイドラインでは、算定された必要量よりも超えている場合、協議の場で協議し、合意できなかった場合は、知事はその病院に対し「要請」「勧告」、公的医療機関の場合は「命令・指示」を行うことが、制度上できることになっています。しかし今や地域の公的医療機関はなくてはならない存在であり、内容を知った住民からは県に対し「地域で頼みの綱だった病院にかかれなくなるのではないか」と不安の声も出されています。先ほど申し上げたように、この必要病床数は、必ずしも実態にあっているわけではありません。削減の数値はどういった位置づけであり、県としてどのような対応をされるのでしょうか。
健康福祉部長の答弁
地域医療構想でお示しする必要病床数の推計は、一つの指標として定めるものであり、むしろ不足している病床への転換、充足について各医療機関が自主的に取り組むことが肝心で、県から各病院に具体的な病床数を一方的に割り当てるものではないと考えております。県では、自主的に転換に取り組む医療機関に対し、地域医療介護総合確保基金を活用して、支援をしてまいります。