中川ゆう子の代表質問と答弁をご紹介します。
中川ゆう子
岐阜県が実施した令和5年度の県政世論調査では前年に比べ苦しくなったとの回答が6割を超える結果となっております。この6割を超えるというのはリーマンショック以降15年ぶりとのことです。
今回の物価高騰が県民にとって非常に深刻な打撃となっているのは、ただ単に物価高騰だけの問題ではありません。長期にわたって深刻な経済の停滞が続いてきたうえに、物価高騰が襲いかかってきたからだと私は思います。規制緩和により働く現場の4割が非正規雇用になりました。その一方で、大企業の内部留保は510兆円に膨れ上がっています。企業の利益が賃上げや下請け単価など経済全体に還流しない構造が作られてきました。これがいわゆる失われた30年です。
同時に、社会保障費や教育への公的支出も抑制・削減されてきました。日本の社会保障への社会支出はGDPの22.9%にとどまり、ドイツは28.1%、フランス31.4%、イタリア28.7%、デンマーク30.8%、アメリカ24.1%よりも低い水準です。
教育へ公的支出も、OECD加盟国中、比較可能な37カ国中36位と最低水準です。家族関係社会支出の保育・幼児教育や児童手当、産前産後の休業補償などの子育て関連の社会支出ですが、これもOECD加盟国の中で比較可能な35カ国中25位です。
このように日本は、社会保障も教育も子育ても、国民の暮らしを支える公的支出が経済力に比べてあまりに低すぎ、そこに今の物価高騰の影響が追い打ちをかけていると私は見るべきだと思います。
この分野へ思い切って予算を配分することは物価高騰から暮らしを守るということだけにとどまらず、県民所得を上げる、停滞する地域経済を立て直すことにつながると思います。
県政世論調査においても、県が重点的に進めてほしいという分野の上位3つは、高齢者福祉、防災対策、子育て支援となっており、県民の声として実際に現れております。
全国的には生活者支援の施策が各地で始まっています。
岩手県では「福祉灯油」を世帯あたり7000円に拡充、従業員の賃上げを行った県内中小企業を対象に最大100万円の補助制度を創設。東京都では市区町村が給食費の保護者負担を軽減する場合に1/2を補助することを決め、新年度は東京23区をはじめ、多くの都内自治体で給食費が無料になる見込みです。青森県では、全国初めて県で交付金を創設し、全ての自治体で給食費を無料にすると表明しています。
生活者支援の拡充について先の12月議会で「状況の変化を敏感に対応しながら、次の予算編成にも反映させていきたい」と答弁されましたので、知事に2点お聞きします。
(1)予算配分の優先度について
新年度予算の基本方針では、「行政の最大の責務が県民の生命と生活を守ること」と記されています。私は、社会保障や教育など生活者支援に重点を置くべきであると考えます。当初予算編成に対する予算配分の優先度をお聞きします。
答弁 知事
新年度当初予算の編成につきましては、既に何度か当議会でも答弁申し上げておりますけれども、県勢を取り巻く多くの課題をしっかりと捉えて、第1に「持続可能な『清流の国ぎふ』を目指して」、第2に「暮らしやすい『清流の国ぎふ』の実現」、第3に「『清流の国ぎふ』の魅力向上と発信」の3つの政策群に重点を置いております。
ご指摘の生活者支援につきましては、これらの政策群に取り組むに当たっての重要な切り口として、きめ細かく進めてまいりたいと思っております。
まず、1つ目の「持続可能な『清流の国ぎふ』を目指して」におきましては、例えば、能登半島地震を踏まえて、住宅の耐震診断・改修支援を拡充するほか、不登校生徒を支援する教育支援センターのICT環境の整備、生活困窮世帯の子どもに対するオンラインによる学習支援、入院中の児童生徒に対するオンデマンド型授業用のコンテンツ作成など、個々の子どもの状況に寄り添った支援に取り組んでまいります。
2つ目の「暮らしやすい『清流の国ぎふ』の実現」では、理想の子どもの数が持てない理由に経済的負担を挙げておられる方が多いことを踏まえて、少子化対策として、第2子以降の出産祝金や高等学校等への入学準備金の支給を継続するほか、新たに私立高校などの授業料支援に係る所得制限の緩和などに取り組んでまいります。
また、様々な生活上の困難を抱える方への支援として、SNSを活用したヤングケアラー向けの相談窓口の開設、DV被害者や困難な問題を抱える女性向けの専用電話相談口の設置などを新たに実施してまいります。
さらに、物価上昇によりくらし向きが苦しくなったというご指摘のあった県政世論調査の結果や、物価水準が依然として高い状況を踏まえ、今年度実施しているLPガス使用世帯などへの料金支援、私立学校や保育施設における給食費、スクールバス燃料費への支援、医療機関や福祉施設の食材費等への支援など、国の対策と歩調を合わせ、5月末まで期間を延長して実施することといたしております。
(2)県債依存度の高い事業に対する考え方について
さらに、基本方針では財政需要の増加に対し「基金の取り崩しも避けられない状況にある」としています。そうであるならば、県の借金である県債残高が高止まりしているのは、どこに原因があるのかを直視すべきです。予算案では県債残高は、新年度1兆6000億円を超え県民1人当たりで計算すると87万円にも上ります。ちなみに1事業で年間100億円を超える起債は、新年度予算では直轄道路事業負担金となっています。
そこで2点目です。
返済規模を表す実質公債費比率は上昇しており、今後の見通しは昨年に比べ悪化しています。これは将来にわたって県民ニーズに応える財源が減るということであり、深刻に受け止めるべきであると考えます。
道路の耐震化や安全対策、老朽化した学校の校舎の改修は待ったなしの問題であり、将来負担を考慮すると公共事業の中でも優先順位を明確にする必要があります。東海環状自動車道のような県債依存度の高い事業のスピードを緩めるなど、起債には慎重になるべきではないでしょうか。
答弁 知事
本県では、県債残高のうち臨時財政対策債の残高は減少しておりますけれども、通常の県債に係る残高については、高止まっております。
また、実質公債費比率は、令和4年度決算で7.2%と増加してきておりますし、この増加の傾向は当分の間続くということから、決して楽観できる状況ではございません。
一方で、近年、激甚化・頻発化する風水害や切迫する大規模地震などの災害に備え、県民の生命と暮らしを守るためには、県土強靭化への絶えざる努力が不可欠であります。
これまで、これらの対策に取り組んできたことが、県債残高や実質公債費比率が高くなっている主な要因の1つであるというふうにも見ております。
また、新年度予算では、このたびの能登半島地震の発生などを踏まえ、県土と危機管理体制の更なる強靱化を重点的に進めることとしております。
具体的には、まず、道路整備としましては、能登半島地震で顕在化した道路の寸断による救助活動や物資搬送の遅れ、孤立の長期化などの事態を踏まえ、緊急輸送道路の整備、斜面対策や橋りょうの耐震化、迂回路となる幹線道路整備などを進めてまいります。
ご指摘のありました東海環状自動車道西回り区間の整備につきましては、大規模災害時の緊急輸送道路としての機能はもとより、沿線地域の活性化や、中京圏の産業・観光発展を加速させる新たな地域連携効果が見込まれるなど、多くのストック効果が期待されることから、令和8年度の全線開通に向け、今後とも着実に推進してまいります。
また、水害や土砂災害対策では、災害リスクを低下させ、生命はもとより財産や暮らしを守るため、河川改修や砂防施設、治山施設整備などについて、引き続き実施してまいります。
加えて、県立学校などの公共施設についても、岐阜県県有建物長寿命化計画を踏まえつつ、個々の整備内容について精査しながら、着実に実施してまいります。
なお、以上申し上げたハード面の対策に加え、危機管理体制の強化として、能登半島地震で顕在化した課題を踏まえた「岐阜県強靭化計画」の改定、巨大地震を想定した実践的な総合防災訓練の実施、発災時に備えた備蓄資機材や装備の拡充、消防団員確保対策にも取り組んでまいります。
当然のことながら、ハード事業を推進していくにあたっては、その財源の多くが県債となることから、将来的な財政負担に十分留意する必要がございます。
このため、将来負担などを引き続き考慮しつつ、緊急性や全体のバランスを見極めながら公共事業に取り組んでまいります。