中川ゆう子
国民健康保険はもともと市町村の事業でしたが、平成30年度より県単位化され、新たに事業主体として県も加わりました。県は市町村が県に納める納付金の設定と市町村への交付金の拠出、市町村は保険料の賦課徴収と役割が分担されてきました。
今の制度となり6年が経過しますが、低所得者が多いにもかかわらず、保険料は他の健康保険に比べ高いという構造的な問題は依然として解消されておりません。
県単位化とともに、それまで市町村が保険料を抑えるために実施してきた一般会計からの法定外の繰り入れは、岐阜県国保運営方針のもとで削減すべきとされてきました。国からの財政支援も実施されていますが、加入者の実態からみるとまだまだ少ないのが実感です。厚労省がまとめた国民健康保険実態調査によりますと、岐阜県における加入世帯の平均所得は143万円余ですが、それに対し、世帯あたりの保険料調定額は14万7千円余。所得の1割以上を占めています。非常に高い負担になっていることが、この数字からも明らかです。市町村ごとに保険料収納率の目標が設定されていますが、この状況からもわかるように、保険料の支払いは容易ではなく、払いたくても、どうしても払えないという状況が広がっているのが実状です。
さらに、県単位化による激変緩和策は今年度で終了するため、保険料の負担は軽減どころか、さらに厳しいものになることが危惧されます。
もう一つの視点として、他の健康保険、協会けんぽと国保との保険料の比較、これを同じところに住んで、同じ家族構成、そして同じ収入で、どれほど差が生じているかについても申し上げます。
ちなみにここでの保険料は、全国統一の算定基準による都道府県標準保険料率(均等割のみ)というものを使用し、岐阜県の場合で試算しました。
例えば、県内に住む20代、一人暮らし、給与年収180万円の場合、協会けんぽはおよそ8万8200円ですが、国保だと13万3500円、およそ1.5倍の差が生じます。
30代の夫婦、小学生2人、給与年収400万円の場合で計算しますと、協会けんぽはおよそ19万6千円ですが、国保だとおよそ46万7千7百円、こちらはなんと約2.4倍になっています。
同じサービスでありながら、同じ収入でありながら、同じところに住みながら、加入する健康保険が異なるだけで、ここまで差が生じています。
そこで4点、健康福祉部長に質問します。
(1)保険料に対する認識について
このように、協会けんぽと他の保険と比較すると、国保は保険料が高くなっています。低収入の方が多いにもかかわらず、相変わらず高い保険料であり、加入者からは高すぎて苦しいという声が聞こえます。県の認識をお聞きします。
答弁 健康福祉部長
県としては、特定検診受診率の向上や糖尿病性腎症の重症化予防などに取り組み、県民の健康づくりを促進し、国民健康保険を含めた医療保険の医療費適正化に努めております。
国民健康保険は、他の医療保険と比べて、加入者が比較的高齢であり、1人当たりの医療費も高額ですが、1人当たりの平均所得が低いため、所得に占める保険料が相対的に高くなる傾向にあります。
このため、保険料の負担を減らすための様々な措置がなされていますが、こうした措置を行ってもなお、負担が重いという構造的な問題があり、国の責任において制度設計がなされるべきものと認識しております。
中川ゆう子
(2)新たな運営方針の影響と県における保険料引き下げへの取組について
現在、来年度からの国保運営方針を策定中ですが、そこでは保険料率の統一化が掲げられており、今年度までに市町村と合意形成を目指すということです。
保険料率統一化については、平成29年時に「医療費水準の高い市町村から低い市町村への負担の転嫁が生じ、医療費水準の低い市町村において、保険料水準の急激な上昇を招きかねない」と、岐阜県国民健康保険運営協議会から答申があり、統一化が見送られてきた経緯があります。
今回、令和11年度までに段階的に統一化が進められる検討がされているようですが、そうなると、あまり医療費を使っていない市町村の保険料が引き上げられることになります。
実際に、飛騨市では段階的に保険料が引き上げられるとの説明が既にされているようです。
統一化が根本的な問題解決につながらないことが明らかです。
そこで2点目です。
この認識と、保険料引下げへどう取り組むか、県のお考えをお聞きします
答弁 健康福祉部長
国民健康保険の保険料水準の統一の目的は、県単位で医療費水準を保険料に反映させることで、保険料の変動の抑制を図るとともに、県内のどこに住んでいても、同じ負担で同じ給付を受けられるようにすることにあります。
県としては、保険料の軽減に向け、まずは県民の健康づくりの推進、特定健診受診率の向上、後発医薬品の使用促進など医療コストの削減につながる取組みを進めてまいります。
併せて、国に対し、更なる財政支援の拡充を求めるとともに、低所得者や未就学児に対する保険料の軽減措置を着実に行ってまいります。
再質問 中川ゆう子
統一化の狙いは、県内どこに住んでいても同じ負担にすることであるとの答弁あったが、そうであるなら、県内のどこに住んでいても同じサービスが受けられるよう、協会けんぽとの差を重く受け止めるべきではないか。保険料引下げは、確実に県として取り組む必要があると考えます。
再答弁 健康福祉部長
国保財政を安定的に運営するためには、国民健康保険が一会計年度単位で行う短期保険であることに鑑み、原則として必要な支出を保険料や国庫負担金、納付金などにより賄うことにより、国保特別会計において収支が均衡していることが重要とされております。
したがって、県として、保険料全体を一律に引き下げるために法定外の一般会計繰り入れを行うことは考えておりませんが、国に対し定率負担の引上げ等の財政支援を行うよう要望を続けてまいります。
中川ゆう子
(3)新たな運営方針における市町村独自の減免制度の取扱いについて
例えば、岐阜市では平成25年度より多人数世帯を対象に独自の減免制度を実施してきました。住民の運動に加え、加入世帯の実状を間近で見ている市町村ならではの工夫や配慮、政策的判断で実施されてきた経緯が県内にも多数ありましたが、その数は減ってきていると感じます。しかし、市町村の判断を尊重するのが住民自治の基本であるべきと考えます。
そこでお聞きします。
自主的にこうした減免制度などを作っている市町村について、新たな運営方針ではこうした独自の取り組みはどうなるのでしょうか。お考えを伺います。
答弁 健康福祉部長
市町村による保険料の減免は、災害や失業等により生活が著しく困難となった方又はこれに準ずると認められる方を対象に、申請に基づき個々の事情を勘案して行う制度として、市町村の判断で、条例の定めるところにより実施することが可能です。
現在、県で保険料水準を統一すべく検討を進めていますが、新たな運営方針下においても、減免制度の取扱いが変わることはありません。
中川ゆう子
(4)保険料引き下げのための国への要望について
これまで全国知事会において、国庫負担の拡充を要望されてきましたが、抜本的な改善は見られません。
保険料引き下げのための財政支援について、今まで以上に強く国に要望すべきと思います。お考えをお聞かせください
答弁 健康福祉部長
国民健康保険加入者の平均年齢の上昇や医療の高度化による1人当たりの医療費の増加などにより、今後も保険料の上昇傾向は避けられない見込みです。
このため、県としては、加入者の負担軽減の観点から、国に対し、国保制度改革時に国が確約した財政支援の拡充について確実に履行するとともに、財政安定化基金の増額、国定率負担の引上げ等、様々な財政支援の方策を講じるよう、全国知事会を通じて、引き続き要望してまいります。
また、子どもの均等割保険料軽減については、対象となる子どもの範囲が未就学児に限定され、その軽減割合も5割にとどまるため、対象年齢及び軽減割合の引き上げについても、引き続き要望してまいります。