中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

【2021年12月議会質問③】高齢者施設における虐待防止のため取り組みの検証と強化について

2021年12月13日 11:00 am
カテゴリ: 活動報告

県内高齢者施設において責任者が書類送検された事案と高齢者虐待防止の取組みについて

県内特別養護老人ホームにおいて介護放棄いわゆるネグレクトがあったとして、のちに亡くなられた入居者4名のご遺族が昨年9月、施設責任者に対し損害賠償をもとめる訴訟を起こされました。新聞報道によると「2019年5月、給与未払いなどが原因で職員27人のうち介護職員26人が一斉退職。そのため、応援職員の数名で25人ほどの入居者の対応をしていたが、必要な食事を与えずパン一切れになり、入浴やおむつの取り換え、体位の交換がされなくなるなど必要な介助がされず劣悪な環境に置かれた」というのが訴えの内容です。また本年9月には、岐阜県警が保護責任者遺棄容疑で書類送検した旨も報道されました。

ご遺族は新聞の取材に「ミイラ状態の母を見て何も言葉が出なかった」「夫が受けた苦痛を思うと胸が張り裂けそう」と語っておられます。

これらは今後、刑事と民事の両面で事実関係や責任問題が明らかになると思われますのでこれ以上は申し上げませんが、県行政にはこうした司法とは別の役割があります。

私が今回質問したい事は、人生最後の場である介護施設において高齢者の尊厳を損なうことを絶対起こさないために、監督責任のある行政として果たすべき役割についてです。

当該施設や同法人の他施設においては、約5年前から施設職員や関係者が施設内での実態を県に何度も通報し相談をしていたにもかかわらず、改善されなかったと訴えておられます。

一方、当該法人の障がい者施設が一宮市にありますが、こちらでは訴えを受けた行政やセンターが何度も熱心な立ち入りや聞き取り調査を行っており、その調査を経験した元施設職員によると岐阜県内の施設とは行政の対応が全く違ったと評価しておられます。
実際、一宮市が立ち上げた障害者虐待防止センターに伺いお話をお聞きしたところ「虐待を取り締まる」というより、その人の尊厳を守り抜くことに重きを置いていると語られました。「虐待」という言葉からはひどい怪我や傷跡、拘束した後などが想像されてしまいますが、実際には明らかな怪我や暴力がなくても、言葉や行動による心理的圧力、従業員への負担、従業員同士の関係性など様々な観点から聞き取りを行い、「適切ではない」事や施設の意識の低さが虐待につながると重くとらえ、そうした施設へは何度もフォーローに入るなど熱心な取りくみをされておられるそうです。障害者施設と高齢者施設で根拠法は異なるものの、福祉施設における対応には共通するものがあると思います。
そして大変印象的だったのが、市やその関係機関にとって愛知県のバックアップがとても心強く大きかったという言葉でした。

岐阜県内の複数の市町村でも同様に、岐阜県の虐待や不正は許さないという断固とした強い姿勢を示してほしいと声をお聞きしています。実際に対応にあたる市町村にとって県の存在というのは大変大きなものがあるということです。

【質問 県内高齢者施設において責任者が書類送検された事案への所見について】

岐阜県では平成30年度に、虐待や虐待疑いを含む事故発生時の適切な対応を定め、施設に対し報告の徹底を求める「岐阜県介護保険施設等における事故発生の防止および発生時の対応マニュアル」を作成しました。さらに翌令和元年には岐阜県高齢者権利擁護センターを開設しています。
これらの仕組みが絵に描いた餅にならず、実際に、高齢者の尊厳を守り相談者やご遺族の思いに沿って十分役割を果たしていくことが重要だと思いますが、
新聞報道や遺族の皆さんの訴えをお聞きし、この間の県の取り組みは十分だったのか率直に疑問を持っております。
県内高齢者施設において責任者が書類送検された事案への所見についてお聞きします。

【健康福祉部長 答弁】

議員ご指摘の事案については、亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の方にお悔やみ申し上げます。現在係争中でありますので、所見については差し控えざせていただきますが県では、施設での虐待が疑われる情報提供があった場合には、市町村と合同で立入調査を行うなど、その都度、法に基づく権限の中で対応してきました。

また、県では、高齢者虐待防止法において高齢者の虐待の防止に第一義的な責任を持つ市町村から、虐待に関する相談があった場合には,「県高齢者権利擁護センター」が、市町村からの相談対応や支援チームの派遣を行うなど、市町村支援を行っております。

さらに、施設基準や運営基準を満たしているか等の確認については、介護保険法や老人福祉法に基づき施設を指定認可する県又は市町村が適時に確認を行い、指導権限を行使して対処しております。

こうした取組みを引続き実施してまいりますが、ご指摘の事案については、係争の進展を注視しつつ、振り返りを行ってまいります。

【質問2 これまでの対応の検証について】
国では虐待が疑われた場合、通告なしでの機動的な実地指導をと平成27年に通知を出しています。こうした機動的な実地検査やそのための迅速な判断のためには、十分な福祉事務所の体制と職員のマンパワーが相当必要ですが、現在の県の対応や体制に不足はないのでしょうか。
県や市町村の対応や体制を検証する必要があると考えますがいかがお考えかお聞かせください。

【健康福祉部長 答弁2】

県は、施設での虐待が疑われる情報提供等があった場合は、その具体性、信憑性等を勘案し、県が指定・認可権限を持つ施設に対し、事前通告なく監査又は実地調査を実施してまいりました。

その上でまず、高齢福祉課と県内8つの県事務所等とで定期的な担当者会議を開催するなど緊密な連携を図り、抜打ち検査などの実施について迅速な判断が図れる体制を構築しております。また、マンパワーについては、疑い事案の内容により、その都度、県事務所等に職員を投入して対応しており、今年度も実施をしております。

このように、限られた人員の中で工夫を凝らし、対応しているところでありますが、今後も、迅速かつ適切な対応に向け、必要に応じて体制を強化し、取り組んでまいります。

市町村の体制強化については、県においで、市町村担当職員の研修を実施するとともに、困難事例については県高齢者権利擁護センターによる相談対応や支援チームの派遣を引続き行ってまいります。

【質問3 今後の取り組みについて】
先の3月議会では施設に対し虐待防止等の取り組みを義務付ける条例改正が可決されましたが、介護施設関係者によると、そのための十分な加算はなく、独自に人員体制を強化しても施設の持ち出しとなってしまうのが現実だと語られています。人の命や尊厳を守るという最も重要なことを施設や職員の良心ややる気だけに依拠していてはいけない問題だとまず申し上げたいと思います。
しかしこうした根本的な課題はあるものの、厚労省の高齢者虐待防止対策の担当者より高齢者権利擁護等推進事業についてレクを受けたところ、国では様々な高齢者虐待防止策を講じていることが分かりました。しかし岐阜県では、市町村職員の対応力強化事業やネットワーク構築事業、虐待対応実務者会議の開催支援、虐待の再発防止や死亡重篤事案が発生した場合の再発、未然防止策検証会議の開催支援など、これらの事業は実施されていません。国の姿勢としては、県の要求があればすべて要望に応えたいとのことでした。
→そこで3点目の質問です。たとえば国の虐待防止策のメニューを活用するなど、岐阜県の取り組みを強化すべきでないかと思います。今後の県の取り組み強化についてどのようにお考えでしょうか。

【健康福祉部長 答弁】

今般の条例改正により、全ての施設に対し、虐待防止のための委員会の設置や指針の策定などを義務付ける制度改正を行ったところですが、県では、従来から高齢者施設職員向けの虐待防止に関する研修や、定期的な実地指導における助言による施設での取組み支援を行っております。

また、国の補助事業を活用した県の取組みについて,ご指摘のあった 「市町村職員の対応力強化事業」については、国の他の補助事業を活屈し、高齢者虐待への対応の実務を担う市町村職員向けの虐待対応研修を実施しでおります。

その他市町村への支援については、これまで県高齢者権利擁護センターにおいて包括的に実施してまいりましたが、今後は、市町村に明示的に取組みを促すためにも、「ネットワーク構築の支援」や「虐待対応実務者会議」、「虐待の再発防止・未然防止の検証会議の開催」について、今後、ご指摘のあった国の補助メニューの活用を検討するなど、高齢者虐待防止に向けた対策を強化してまいります。

【再質問 検証の必要性について】

「今後、国のメニューを使って取組みを強化する」と答弁があったが、検証について答弁を避けた。強化するためには検証が必要ではないか。
県民に透明性をもちながら、市町村や県の対応や体制について検証していただきたい。

【健康福祉部長 再答弁】

体制の検証について行っていくべきではないかということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、新たに、国の補助制度も活用しまして、そういった取組みを進めていきたいというふうに考えております。

【再々質問 透明性を持った検証は】

入所者は自分で訴えることができない立場にある。こうした入所者を守るのは県。実際に立入検査を受けた職員の方が、愛知県と岐阜県で、あまりにも熱量が違ったということを言っている。歳を重ねた人生の最期の場がこれではいけない。市町村や県の対応や体制について県民に透明性をもって検証していただきたい。

【健康福祉部長 再々答弁】

虐待防止について再度ご質問いただきました。まず、県の熱量が違うのではないかというご指摘でございますけれども、寄せられた情報提供の内容を踏まえまして、時間に関わらず、事前通告もなしに、立地する市町村と合同で施設への立入調査を行うなど、事案の状況によりまして、県として必要な対応については行っているというふうに考えております。

そのうえで、これまでの取組みについての検証をということでございますけれども、ご指摘も踏まえまして、国の予算の活用も考えながら、どのような形で実施できるかも含めて検討をさせていただきたいと思います。

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