2024年7月10日 8:01 am
カテゴリ: その他
リニア中央新幹線のトンネル掘削工事にともなう水枯れへの対応について
リニア中央新幹線日吉トンネル南垣外(みなみがいと)工区の工事が進められていた瑞浪市大湫町でおきている、ため池や井戸での水涸れ、水位低下について質問します。井戸やため池、共同水源など14カ所で水位低下、枯渇が確認されています。昨日、地元の小川議員が紹介されたように、おおくてという地名は大きい沼を意味すると言われ、その名のとおり周辺には湿地帯が点在し県内一と言われる県指定天然記念物であるヒトツバタゴの自生地があります。長い年月をかけて土地を改良した水田と歴史ある宿場町が魅力となり、市内では人口比で考えると移住者がトップクラスとのことです。多くの方が、地下水の代替(だいたい)水源として水道を引いたから良い、とならないのはおいしい地下水を失っただけでなくこうした貴重な動植物が豊に存在している地域だからだと感じています。
これまで、リニア中央新幹線事業については、電力効率の悪さ、採算性、環境への影響、残土の問題など様々な点から問題提起を行ってきました。地元住民の方々からは、「水道を通したから大丈夫という話ではない。これまでずっと湧き続けてきた湧き水がぴたっと止まってしまったショックは言葉にできない。」「毎年移住者があった地域だが、魅力が失われてしまうのでは」「地下水を戻してほしい。リニアに反対ではないが、この問題の解決なしに工事再開はありえない」などの声が寄せられました。水資源をまもるという問題は沿線どの地域でも共通の課題です。
静岡県では、JR東海が大井川で毎秒2トンが減水するとの予測を公表したことを受け、失われるトンネル湧水の「全量戻し」「県の環境監視体制にJR東海が参加」することを求め、JR東海が合意。静岡県中央新幹線環境保全連絡会議が立ち上げられています。岐阜県においても、地下水については、環境影響評価書でも、一部の地下水の水位へ影響を及ぼす可能性が指摘されており、環境保全措置として、適切な工法を用いることや、地下水の変化の兆候を早期に発見し対策を講ずることが記されています。それにも関わらず、水位低下を受け3月に区の総会でJRに対し工事中止を申し入れたが、工事が止められたのは、県と市が申し入れた5月中旬であったとのJRの姿勢は、地元住民の意向が軽んじられており、不信感を覚えるという住民の方々の声は当然のことと考えます。早期対応が重要視されてきたにも関わらず、JR東海の対応は適切だったのでしょうか。また、県においても環境影響評価に基づいて随時細かい観測データの報告を受けて検証をしていくことで、JR東海による対応の遅れをカバーできるのではという意見もあります。
(1)これまでのJR東海の対応と今後の県の対応について
Q 中川
3月に地元住民が工事を止めてほしいと要望したにも関わらず工事を継続したこと、さらに水位低下の報告が5月まで無かったことなど、JR東海の対応は適切だったのでしょうか。また今後こうしたことを2度と招かないようにどのように対応されるでしょうか。A 知事
県としての受け止めということでありますが、日吉トンネル南垣外工区におけるトンネル内湧水の増加と工事用観測井の水位低下が今年2月に確認され、さらに大漱町内の14の井戸や共同水源における枯渇や水量の減少が、4月下旬までに次々と確認されたということでその報告が、JR東海からあったわけでございますが、これがなされたのは、ご指摘のように確認をしてから2カ月以上経過した、5月に入ってからということでございました。この遅れにつきましては、JR東海に対して私どもとしては誠に遺憾である旨を伝えたところでありますが、専門家からも厳しく指摘されておるところでありますが、私自身、このことは単に行政上の手続きの遅れということに留まらず、対応の遅れにもつながったのではないかというふうに感じております。この事案の発生を受けて、県としては、早速、県環境影響評価審査会地盤委員会を開催いたしまして、JR東海及び瑞浪市の出席のもと、論点整理と検証を公開の場で行ってきております。また、会議の内容は、別途、地元住民の方々に対しても市の方からお伝えしております。また、こうした事態が起こらないように、リニア沿線7市町の首長と協議した結果、緊急事案発生時には、JR東海と地元市町及び県との間で速やかに報告をし、同時に地元市町から沿線の他市町に情報を提供・共有する体制を構築した次第であります。JR東海にも、この体制に沿って対応するよう申し入れております。さらに、日々の動きに関しては、JR東海が測定しているトンネル湧水量や地下水位データについて、6月20日以降、大漱町のコミュニテイセンターに毎日掲示されておるわけですが、先日の委員会における意見も踏まえて、ホームページなどを通じて、更に広く情報が提供されるよう、現在JR東海の方で再検討していただいているということでございます。
(2)県がJR東海の補償に関する窓口となる体制作りについて
Q 中川
水道についてJR東海によって恒久的に補償されるのかどうか詳細は不透明ですが、公共工事における水の枯渇への補償はおおむね30年と言われています。水道水の費用をいつまで補償されるのか、地権者が変わっても対象になるのか、施設の修繕や維持管理費など将来にわたって住民が矢面に立ち交渉を続けるのは難しいと思われます。これまでも工事にかかる要望は地元住民が行なっておられ、個別対応は難しいという話がありました。県が窓口となる必要があるのではないでしょうか。お考えをお聞きします。A 知事
一般論として、地元住民の皆さんの代替水源の確保といった補償という問題だけに限定すれば、基本的には原因者であるJR東海と、影響を受けた住民の方々の間で解決されるということでありますけれども、しかしながら、今回の事案につきましては、その重大性、緊急性、広域性に鑑みて、沿線自治体、県、JR東海、更には専門家から成る委員会、そして地元住民の方々の全てが情報を共有し、対策を丁寧に見定めていくということで進めているところであります。このため、先ほど申し上げましたように、JR東海沿線7市町、県との連携体制に基づいて、対応してまいります。それから、瑞浪市の住民の方々との関係では、現在は、地元の瑞浪市が、直接住民の方々に寄り添い、地域の意見を伝えるなどの対応を行うとともに、県との間では、情報共有から具体的対応に至るまで、緊密に連携をとっております。また、委員会も公開での審議を徹底して進めてきておるということでございます。(3)工事再開の条件について
【質問 中川】3点目、工事再開の条件についてです。トンネル内の湧水を防ぐ薬剤の注入が進められていますがいまだ水位低下は止まっていないとのことです。地下水を戻してほしいというのが住民の声です。県は工事再開の条件として、最低限、地下水を元に戻す、元の環境に戻すことをゴールに定めるべきと思うがどう考えていらっしゃるでしょうか。
【答弁 知事】
今回の事案を検証するに当たりましては、県環境影響評価審査会地盤委員会において、影響範囲の把握、原因究明、応急対策、被害拡大防止、モニタリング、水環境の保全に向けた検討、と6つの論点が示されております。そのため、まずは、この6つの論点について、 JR東海から十分な説明がなされ、専門家である委員の皆様方による審議が尽くされることが重要であるというふうに考えております。
再質問 中川
昨日の議会の答弁でしっかり住民の声に耳を傾けていくとおっしゃいました。住民の声はどういう声かというと「元に戻して欲しい。」という声が大きいということもおっしゃっておられました。環境評価審査会で審議をしている、6つの論点で審議をされるということですが、岐阜県としてはどこを目指しているのでしょうか。それをやっぱり明確にしていただきたいと思うんです。「元に戻して欲しい」と住民の皆さんがおっしゃるのであれば、元に戻すんだというのが県の姿勢だと、是非、表明していただきたいと思います。例えば、環境影響審査会の中で、JR東海は薬液の注入の効果をどこで効果があったと測るのかという問いに対して、トンネルの湧水が止まったらいいのか、地下水がちょっと戻ればいいのか、それとも井戸水が復活するまで頑張るのか、その点について、問われておりました。これは県としてもしっかり考えを持った上で、この問題に望んでいただきたいと思います。私は、元に戻りませんでしたがエ事は再開します、ということでは、地元の住民だけでなく、これから工事を進められる住民の皆さんにとっても理解は得られないものと思いますので、やっぱり元に戻すということにこだわって、そこを目指していただきたい。工事再開の条件に県として考えていただきたいというふうに考えております。