2024年7月10日 8:07 am
カテゴリ: その他
今後の木曽川水系連絡導水路事業について
徳山ダムからの水を濃尾平野北部の地中にトンネルを通し、一部は長良川を経由し、木曽川へ導水するという木曽川水系連絡導水路事業について質問します。15年前にこの導水路事業はダム検証の対象になり実質中断していましたが、昨年名古屋市長が参加を表明し、事業の検証が進められることになりました。上流施設は、揖斐川町、本巣市、岐阜市、各務原市など岐阜圏域の北部の地下を通り、全長は約43㎞の計画となっていますが、伏流水や地下水が豊富で水道水源としての利用も多い地域であり、地下水への影響が懸念されます。また、これまでも申し上げていますが、長良川を始め、河川環境への影響についても心配しております。
当初、長良川には常時放流する計画でしたが、長良川の環境悪化を懸念する意見が多く出され、異常渇水時並の事態が起きる恐れがあるときに放流する計画に変更されました。しかし異常渇水と言っても、世界的な異常気象に見舞われた平成6年の異常渇水時でも、長良川の水は枯れることなく、その伏流水を使う岐阜市の水道は取水制限もなく、水道事業にも大きな影響はありませんでした。仮に平成6年渇水時の水量で導水路から放流すると試算した場合、長良川を流れる水の約4割が徳山ダムの水になるため、生態系への影響は計り知れないと考えます。
総事業費についても申し上げます。これまで890億円と言われておりましたが今回、2270億円に、およそ2.5倍に大幅増額されております。30億円と言われていた県の負担も当然増え、仮に単純計算したとして75億円です。いま県財政を見ると、実質公債費比率は急激に悪化しており、多くの県債(いわゆる借金)を伴う公共事業については必要性を慎重に見極めなければならないと言われているところです。特に老朽化した学校や道路、橋梁などの改修は待ったなしです。これまで岐阜県としては導水路事業について事業費の縮減を求めていましたが、結果として減るどころか大幅に増額しています。そして今後さらに増える可能性があると考えられます。
(1)事業費の増額について
Q 中川
この総事業費についてですが、890億円から2270億円と大幅増額されました。これは県民の理解を得られるものなのでしょうか。どのように受け止めておられるかおきかせください。A 知事
本事業は、徳山ダムに確保した水を、異常渇水時に木曽川や長良川に導水し、流量を増やすことで可茂・東濃地域の渇水被害を大きく軽減するとともに、魚類等の生息環境の保全に資する、本県にとっては重要な国家プロジェクトでございます。ご指摘の事業費や環境に対する懸念については、これまでも県としても十分な配慮が必要であるというふうに考え、また、その旨言ってきておるところであります。まず事業費についてでありますが、これまでのダム検証に係る検討の経緯においては事業の目的の変更はなく、本県の現行の費用負担率3.3バーセントも変更は無いものとみております。したがって、全体事業費の増額に伴い、県の負担額は、概ね現在の30億円から75億円程度になるというふうに見込まれております。今回示された全体事業費の増額は、現場条件、物価の変化、建設業の働き方改革、消費税の引き上げ、エ期の延期によるものなどを概算で積み上げられたものと承知しております。
また、検証の過程で検討されました複数の代替案の中でコスト比較が行われ、相対的に導水路案が最も安価であるというふうに示されております。ただ、このコストの概要につきましては、今後詳細なルート検討を進めるにあたり、最新の知見や技術を取り入れて可能な限り縮減していただくということを強く申し上げてきております。また、私自身からも中部地方整備局長に直接申し入れをしております。この点については、国、水資源機構、関係自治体による「検討の場」がございますが、この場でも各関係自治体から同様の意見が相次いでおりまして、これは関係自治体共通の問題意識ということでございます。
再質問 中川
可能な限り、費用の縮減を申し入れている、ほかの自治体も同じである、私も同感です。費用の縮減を申し入れるのはもちろんですが、同時にこれがもっとも効果的な方法だ、異論がないと県はしたが、しかし事業費は一気に2.5倍に膨らんでいる。県債が増えるということは、毎年の公債費が上がるという事は、それだけ福祉とか教育に回す財源がなくなっていく。そういう意味では、県全体の中で優先すべき施策は何か。2.5倍になったけれど財政的な裏付けがあるのかなど、そういった議論を経たうえで、30億円から75億円の負担を受け入れているのか伺いたい。再答弁 知事
導水路の事業費でございますけども、これについては、議員と同様、私も大変危機感をもっているところでありますし、県の財政の状況も、これからそろそろ十分気を付ける段階に入っていくということでございます。一方で、縮減の努力を国に対して促しながら、他方で県全体の投資の中でどういうふうに織り込んでいくか、かつ岐阜県の水環境の安全・安心という観点からの重要性を踏まえながら、どのように全体の投資の中でこなしていくかということについては、これから順次検討していきたいと思っております。(2)環境レポートに関する今後の対応について
質問 中川
環境レポートとは、環境影響評価に相当する独自のものであり、これまでその検討項目・手法について県からは有識者を含め128件の意見、市町村、一般住民も合わせると182件の意見が出されてきました。地下水や河川環境、動植物など多岐にわたる重要な意見であると受け止めていますが、15年前と現在では異なる状況が生まれています。たとえば、長良川古津周辺では掘削がおこなわれ、河川の形状や断面が変化しているとのことですし、特定外来生物の状況も変化しています。また導水管を通す工法も変わるなど、事業の前提も異なっています。補強すべき点として、県は、長良川への水の混入による風評、イメージへの影響について意見を出していましたが、その後、清流長良川の鮎の世界農業遺産認定への影響やSDGs生物多様性の観点など、新たな視点が増えています。時代に即して検討すべき項目を補強すべきです。今後、事業の検証にかかる検討の過程で、関係地方公共団体として意見を出すことができるとのことですので、これまでの検討の場において市町村が環境への影響について出してきた意見をまとめ、県として意見を出して頂きたいですし、同時にこれから再開されると思われる環境レポートへの取り組みは慎重に検討を重ねていただきたいと要望します。そこで2点目です。15年前のダム検証前に出された環境レポート案について、県は気象データなどこの15年間のデータを追加して再検証を求めていますが、同時にその前段階の調査項目や手法についての意見もアップデートすべきと思います。今後の県の姿勢をお聞かせください。
A 知事
次に環境への影響でありますが、県民の関心の高い長良川・木曽川の水環境を守る、これが本県としては一貫してとってきた姿勢でございます。特に、長良川では、世界農業遺産である「清流長良川の鮎」への配慮が求められますし、導水路トンネル沿線の地下水への影響を懸念する声もございます。このため事業実施にあたりましては、周辺地域への環境に十分配慮するよう、機会あるごとに強<申し入れを行っております。ご指摘の「環境レポート(案)」につきましては、平成21年12月に本事業がダム検証となったため、本県としては、精査を中断して現在に至っているということでございます。今では公表から15年が経過しております。この間、気象状況、河川内の地形、動植物の生息状況など、環境は変わってきておると思われます。県としては、引き続き全体の見直しを求めてまいります。その際には、議員からもご指摘のありました調査の項目や手法の検討にまで立ち返って、改めて有識者や県民の皆様のご意見をお聞きする必要があるというふうに考えております。