中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

12月議会(2)ひきこもり支援

2015年12月16日 8:57 am
カテゴリ: 活動報告

理念と哲学を持った支援を

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Q、中川ゆう子

「ひきこもり」とひとことで言っても、さまざまな状態がありますが、今回は、自分の部屋から一歩も外に出ることができない状態だけでなく、コンビニなどへの外出はできるが人と関わるなど社会参加ができない状態が6か月以上続いている、いわゆる「社会的ひきこもり」について取り上げます。内閣府が平成22年に行った「ひきこもりに関する実態調査」によると、ひきこもったきっかけは、不登校が11%なのに対し、「職場になじめなかった」と答えた人が23.7%。就職活動と答えた人が20.3%とあるように、大人になってから引きこもるパターンも多いことが分かっています。ひきこもりは若者のものと捉えられがちですが、実際に支援団体に寄せられる相談では、10年以上ひきこもっており、当事者は30代、40代であったり、親の世代が退職し年金暮らしであったり、親の介護問題がかさなり二重の困難を抱えるケースなど、相談の内容や年代が変化してきているとも言われています。よせられる相談では、たとえば、「職場になじめずプレッシャーで精神的に追い詰められ、会社の前でドアを開けて職場に入ることができなくなった」方や、仕事が見つからず行くところがないので、最初は1日、2日から始まりずるずると引きこもってしまった、という方など、きっかけも精神状態もさまざまなものがあります。過去の労災認定の中には、過酷な長時間労働やパワーハラスメントなどにより、企業に使い捨てにされた若者が行き場をなくして引きこもってしまった事例も見受けられます。このように、ひきこもりの背景には、終身雇用ではなく不安定雇用が増大し雇用形態が変化したことや、いわゆるブラック企業という言葉が当たり前に使われるような違法な働かせ方が社会問題にまでなっていることなど、若い世代の置かれている状況の変化や、社会的な要因もあると考えられます。「ひきこもり」という言葉には負のイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、支援には非常に大きな可能性と希望を秘めていることも申し上げたいと思います。先ほどの調査において、「仕事をしなくても生活できるのならば仕事したくない」と答えた割合は、ひきこもりの気持ちが分かると言うひきこもり親和群では7割を超える一方、実際にひきこもっている人では49.1%、一般群は41.1%とほぼ同割合です。つまり、たとえ生活に不安がなかったとしても仕事に就きたい、働きたいという意欲は非常に高い事が分かります。また、「いつか自分の夢を実現させる仕事に就きたい」という方は6割に達しており、これらの人をどう支援するか、行政や社会の役割は重要だと感じます。ここで、ひきこもり支援の実践例を紹介します。秋田県藤里町では、社協が中心となり実態調査を行い、現役世代人口のおよそ1割がひきこもり状態と把握し、支援が始まりました。まずは、ひきこもりの人が社会に少しでも参加できるように参加登録を募って、段階的にそれぞれの得意分野での能力を生かして働き、地域のために役立ててもらう「こみっとバンク」という仕組みです。これは高齢化が進む町の福祉施設の清掃など、地域貢献活動が中心です。またハローワークへの同行などの支援事業など、働く意欲が出てきたタイミングで少しだけ背中を押す役割も担っています。支援のあり方で特徴的なのは、従来の、法的に支援が必要になってから対応するやり方ではなく、まちで約100人いたひきこもりを、高齢化率40%以上の藤里町に埋もれている若い力だと捉えている点です。地域を支える人として挑戦できる場所を提供することで、今では多くのひきこり経験者が町で活躍する場をもち、4年間で60人以上がひきこもりから脱し、35人以上が一般就労を果たしております。医療でもカウンセリングでもなく福祉の立場からの支援により、ひきこもりがまちづくり・まちおこしの担い手として活躍しているシステムが実現しているわけですが、人口減少に直面している岐阜県でも、考え方として学びとれる点は多いのではないでしょうか。

ひきこもり経験者は、「自分の役割があったのでその場にいることができた」「人の役に立てたという喜びを少しずつ積み重ねていったら、それにあわせ周りとのつながりを持てるようになった」「ひきこもり期間は、ズタズタになった自己肯定感を取り戻す工程だったと思う。」と語りますが、藤里町の支援の在り方は、まさに、パワハラ、サービス残業、社員の使い捨てなどのいわゆるブラック企業の対極にあると思いました。行政がひきこもり支援を行う際、本人が外に出たいと思っていなくても、「頑張って外に出るのが良い事」という価値観を一方的に押し付けたり、就労をゴールにしてしまったりすると職員も本人もつぶれてしまいます。メールでも手紙でもコミュニケーションが取れるようになったり、一時的なアルバイトやボランティアでもその人の人生には大きな意味を持つものです。まずは、ひきこもっている本人の意思や状態を尊重する一方、決して社会的に孤立させない、という方向性の支援が必要なのではないでしょうか。「一億総活躍」といってひとくくりにするのではなく、住民ひとりひとりに寄り添って、彼らの活躍できる場を生み出していくことこそ、本来政治や行政の果たす役割だと思います。現在、県では、精神保健福祉センターにて、グループミーティングを開いたり精神疾患の相談や電話相談を受けておられ、医療やカウンセリングを中心に支援されているとのことです。

1点目、知事へ質問

ひきこもり支援のあり方と必要性について知事に、伺いますが、県としてのひきこもり支援の在り方、ひきこもり支援の必要性をどのようにお考えでしょうか。

知事の答弁

最近、社会的問題として、「社会的ひきこもり」という言葉をよく耳にするようになっております。これは、例えばパワハラなどを原因とする人間関係の悪化、ブラック企業による過酷な労働環境、非正規労働がもたらす不安定な生活などを原因として就労意欲を喪失し、ひきこもりになる事例が多々発生していると言われております。一旦、ひきこもりになると、孤立感が生じて、自分に対する評価の低下、あるいはうつなど精神状態に影響し、やがては身体にも悪影響を及ぼすといった悪循環に陥り、時には家庭内暴力、自殺にいたることもあるというふうに聞いております。また、こうした大人の引きこもりは、不登校と異なって、離職とともに社会的関係が絶たれるということになりますので、支援の枠組みから置き去りにされてしまうことも事態の深刻化につながって、大変痛ましい事例も現れてきているということでございます。こうした「社会的ひきこもり」による悲劇を繰り返すことなく、苦しんでいる方々が再び輝いた人生を取り戻し、各々がもてる力を存分に発揮できることは、まさに希望と誇りを持てる岐阜県づくりという上で、大変重要な課題であるというふうに思っております。しかしながら、ひきこもりにはいろいろな医学的要因、社会的要因、複雑に絡みあっておりますし、支援内容も医療、福祉、教育、就労など多岐にわたろうかと思っております。議員の方から藤里町の例がありましたが、これは福祉の立場からの支援ということで、これまでと違う、新しい取組みということで、私どもも参考にさせていただきたいと思っております。加えて、御指摘もありましたけども支援者が設計した復帰支援策になかなか乗れないということで、かえって悪化するケースもあるようでありますし、あるいは、なかなか結果はが得られないということで、ひきこもり当事者と支援者がともに疲弊をしてしまうというケースもあるというふうに聞いております。したがって、支援と一口で言いましても、なかなかそのあり方は難しいものがあるということでございます。こういったことから、医療、各種支援団体、家族会による支援、就労支援、電話・メールによる相談、訪問支援活動、居場所づくりなどなど、あらゆる支援策を検討して、一人ひとりじっくりと丁寧な支援の手を差しのべていくということが必要ではないかというふうに思っております。これに対する具体的な取組みの方向としては、後程部長からご答弁申し上げますが、今後、民間団体にもご参画いただいたうえで、医療、保健、福祉、教育、労働、支援団体等からなる連絡協議会を立ち上げて、そして積極的に現場に出向いて支援対象者の相談内容に応じて、きめ細かな支援を行うような、そういう体制づくりに取り組んでいければ、と思っております。

2点目、3点目、健康福祉部長へ質問

ひきこもり当事者の実態及び支援団体を把握するための取組みについて、実態把握は支援を進めていく中で非常に重要です。県には、なぜこうした問題がおこっているか実際に掴んでほしいと思っております。また、ひきこもり支援は、医療面での診断やサポートだけでなく、日常のゴミ出しやハローワークなど役所での手続きなど日常生活の支援から、無収入や貯金を使い果たしたなどお金のこと、家族の理解や家族への支援など多岐にわたります。加えて、ひきこもりへの偏見をなくしていくことは、支援の輪を広げるだけでなく、問題を隠しがちな家族や本人を勇気づけることにつながります。行政でしかできないこと、民間の支援団体にできること、そして身近な家族、親せき、近所の方だからできることなど、支援の担い手は分かれています。そこで1点目の質問ですが、ひきこもり当事者の実態、および支援団体の把握はどのように進められるでしょうか。2点目として、ひきこもり支援は、医療、就労、家族関係、経済的問題、日常生活支援など多岐にわたっていることを考えると、こうした総合支援の役割が県には求められると思うが、いかがでしょうか。

健康福祉部長の答弁

県では、保健所や精神保健福祉センターなどで、ひきこもりに関する相談を受けておりますが、県が把握する情報だけでなく、支援団体を含めた関係機関に蓄積されている情報を集約・分析して、ひきこもりの根本的解決に向けて取り組んでいくことが重要であると考えております。このため、県内で活動している支援団体等の情報を収集し、知事から答弁のありました連絡協議会に広く参画いただくことで、様々な情報の集約化・連携の緊密化を図り、ひきこもりの実態把握に努めてまいります。

中川ゆう子の再質問

連絡協議会は、各地域で設置されている「ひきこもり地域支援センター」のことでしょうか。将来これになっていくのでしょうか。

健康福祉部長の再答弁

ご答弁申し上げましたように、各関係機関の包括的な支援を行える組織体制ということで、連絡協議会もその一つの取組みとして考えていきたいと思っております。具体的には、精神保健福祉センターを中心に、組織のあり方、体制のあり方等を具体的に今検討しているところでございます。総合的なひきこもり支援を行うには、関係する多くの機関同士の連携を一層強化し、包括的な支援体制を充実させていくことが重要です。来年の4月から、希望が丘子ども福祉医療センターの精神科医が常勤2名体制となり、継続的な指導を受ける目途がついたことから、専門医師の市道も受けつつ、対応事例やノウハウを集約・分析した上で各機関へフィードバックする仕組みを構築してまいります。さらに、各分野の専門家から適切な支援方法を習得する研修を実施してスキルアップを図るとともに、積極的に現場に出向くアウトリーチ型の支援を実施できるよう、体制の強化を図ってまいります。

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