中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

9月議会(1)国民健康保険事業

2015年10月5日 6:21 am
カテゴリ: 活動報告

共同運営化について

中川15093

Q、中川ゆう子

今年の5月にいわゆる「医療保険制度改革関連法」が国会で成立しました。これによって現在、市町村で運営されている国民健康保険事業が、2018年をめどに大改変され、都道府県は市町村と共同運営することとなります。

国保の加入者は、ご存知のとおり、退職し年金暮らしの高齢者、自営業、アルバイトなど会社の社会保険に加入していない非正規雇用労働者などで、比較的低所得者が多く加入する保険です。厚労省の統計では、世帯の平均所得は、1984年度に179万円でしたが、2012年度には141万円に落ち込み傾向です。しかしながら、国庫負担の削減、医療費の増加などで、一人当たりの国保料は1984年度3.9万円から2012年度には9.1万円にまで引き上がっています。所得の1割以上を占める保険料は、低所得者にとって支払い能力以上となり、悪質な滞納ではなく「払いたくても払えない」滞納者を激増させました。

こうした滞納者に対し、行政が行ってきたことは、資格証明書の発行と差し押さえです。しかし、このように対応を強化しても、収納率が抜本的に改善しないのは、悪質な滞納でなく加入者の貧困化と保険料が所得に見合っていないのではないでしょうか。

新制度では、都道府県が国保事業に必要な費用を県内市町村に納付金として割り当て、市町村は住民に保険料を賦課徴収しその納付金を県に納める仕組みとなります。仕組みは変わりますが、今申し上げたような制度の構造的矛盾の根本的解決にはつながっていません。そこで5点お聞きします。

1点目、知事へ

現在市町村で運営されている国保は、今申し上げたような深刻な問題を抱えている。県としてこうした加入者の実態をどうとらえているか。

知事の答弁

市町村国保の加入者は、以前は、農家や自営業者といった比較的年齢が若く、収入が安定している方々が全体の6割以上を占めている時期がございました。その後、産業構造の変化や少子高齢化の急速な進展を背景に、高齢者、退職後の年金生活者、非正規雇用の労働者といった、多額の医療費を必要としている方や所得の比較的低い方の割合が増え続けております。平成25年度現在で、こうした方々の割合は、7割以上に達しております。そのため、現在の国保は、多額の医療費支出を所得の低い方々の保険料収入で賄っていると、こういう財政構造になっておるというふうに理解しております。

2点目、健康福祉部長へ

新制度で市町村は納付金の完納が義務付けられる。保険料、そしてその元となる納付金はどのように決定されるか。改変される内容について。

健康福祉部長の答弁

国民健康保険法の改正により、都道府県が市町村と共同で国保の運営を担うこととなります。都道府県は、財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業運営のための中心的な役割を果たします。一方、市町村は、被保険者の資格管理、保険料の決定、賦課・徴収、保険給付などの事務を行うほか、保険事業などの地域におけるきめ細かい事業を引き続き担ってまいります。これらの役割分担のもと、都道府県は、市町村ごとに医療費水準や所得水準を考慮して、国保事業費納付金を算定いたします。また、この市町村は、納付金を賄うため、各々の実情に応じた保険料算定方式や保険料率を定め、保険料を賦課・徴収することとなります。

3点目、国庫負担について、知事へ

今回の改革では「加入者の貧困化と高すぎる国保料」という国保の構造問題が解消されないことが明らかになり、全国知事会では「国庫負担増」を求める要望を出されている。その結果、今年度は国から低所得者対策として1700億円の拡充が行われ、2017年度以降は3400億円の公費投入が予定されたのも、こうした地方自治体や世論の力が大きかったと思われる。しかし、一方、政府の試算では、たとえ3400億円の公費が投入されても、国保の財政構造を根本的に変えない限り、保険料高騰は避けられないことが明らかに。(内閣府の試算では、先ほど保険料が9.1万円と申し上げたが、これが2025年には、11.2万円)(全国知事会の社会保障常任委員長は)わずかな公費投入では解決しないことを指摘し、協会けんぽの保険料水準まで引き下げが可能な「一兆円の国庫負担増」が必要と主張されたが、知事自身はどうお考えか。

知事の答弁

国は、平成30年度以降、毎年、ご指摘にもありましたように、3400億円の支援金を追加投入することを決定したわけでございます。現在のところ、市町村国保の財政赤字、足し合わせますと、年間で約3000億円というところでございますので、この3400億円の追加投入ということで、当面の赤字解消には効果があるということでございます。しかしながら、その後も医療費は、高齢化の影響などでさらに増加することが予想されておりまして、知事会としては、将来的には3400億円に留まることなく、更なる財政支援の拡充が必要というふうに主張しておるわけでございます。同時に、ご指摘にもありましたように、この国保が抱える構造的な問題が、依然として残されているということであります。栃木県知事は、全国知事会の社会保障常任委員長でありまして、その知事から「1兆円の国庫負担増」という発言があったわけでございますが、これは、仮に国保の保険料負担率を協会けんぽ並に低減するとすれば、1兆円規模の国費の投入が必要であると、こういう趣旨でありまして、この構造問題の大きさといいますか、マグニチュードを端的にお示しになったのではないかと、私は受けとめております。私自身としましても、かねてから知事会が主張しておりますように、持続可能な制度とするためには、他の医療保険者と統合し、7医療保険制度を一本化することを視野に、今後、国民的な議論を行っていく必要があるというふうに考えております。

4点目、健康福祉部長へ

今回の改変は、市町村による一般会計の繰り入れ解消をめざすものではあるが、国保加入者の貧困化や保険料の高騰が社会問題になる現状では、繰り入れの即時解消は非現実的であり、政府も「自治体の判断にゆだねる」としている。私自身も、この制度改変が、県民にとって負担増、弱者のしわ寄せにすべきでないと考える。そこで、ひきつづき県負担金、県補助金について同水準の予算確保がされるのか。また、市町村における繰り入れの意志は尊重するお考えか。

健康福祉部長の答弁

新制度に移行しても、医療費に対する給付や低所得者に対する保険料軽減制度などの義務的な負担については、これまで同様、県として予算を確保していくこととなります。また、市町村が一般会計が繰入れを行うことについては、各市町村の判断に任されており、今後は、県が算定する納付金額を基に、こうした判断などを踏まえて、市町村は保険料率を決定することになります。

5点目、健康福祉部長へ

納付金算定においては、加入者の生活実態をつかむため、「払える保険料」を追求する必要があると考えるが、お考えは。納付金の算定など、国保運営方針を定める国保運営協議会の委員については、実際に保険料徴収や窓口対応をする市町村の職員、保険加入者の参加は可能か。

健康福祉部長の答弁

所得の低い方々の保険料については、均等割、世帯割といった保険料応益負担分に対し、所得に応じて7割、5割、2割を軽減する制度があります。平成26年度から27年度にかけて、5割、2割軽減の所得基準が引き上げられ、対象者が拡大されてきたところです。また、失業などにより著しく所得が減少した世帯などには、保険料の減免や徴収猶予の制度がございます。今後も、市町村に対し、保険料軽減制度や減免制度等の的確な運用を指導してまいります。次に、国保の運営方針についてでございます。方針決定に向けてご議論いただくために設置する国保運営協議会の委員には、被保険者代表や市町村等の公益代表にも参画いただく予定です。さらに、方針決定にあたっては、あらかじめ市町村の意見を聴くこととされているため、地域の実情を熟知している市町村担当者との意見交換の場を設け、いただいた意見を十分に反映させてまいります。

再質問、健康福祉部長へ

7割、5割の減免の話があったが、保険料減免対象である所得が200万円未満の世帯で約8割が滞納。割合として大半であるというのが実態。来年度の運営方針を決定する際は採算の面だけでなく、加入者の生活実態も加味し、両面から考えていく必要がある。医療費の伸びだけでも、1%で10数億円の影響がある。これらが保険料にかかってくる。そういった観点があるのか、運営協議会について、もう少し詳しくお答え頂きたい。

健康福祉部長の答弁

先ほどもご答弁しましたとおり、被保険者の代表の方、それから市町村の代表の方、いずれも参画して頂く方向で検討しております。また、市町村担当者との意見交換につきましては、地域の実情を一番よく知って頂いておるということで、むしろ、日常的に意見交換等を行っていきたいと思っております。

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