2019年3月25日 6:34 am
カテゴリ: 活動報告
新年度予算案と今後の財政見通しについて
これまでの財政運営の総括と「岐阜県行財政改革指針2019」のねらいについて
本年は、高い保険料が課題になっている国保が県の事業になり1年。先日、県が発表した内陸直下型地震の被害想定調査では、震度7の岐阜市を含め、複数の市町村において想定最大震度が引き上げられ、さらなる防災対策への支援が求められています。団塊の世代が後期高齢期を迎える2025年を見据え、また、高齢者の皆さんの中には、高齢で運転免許証を手放したくても生活できないので手放せないという声。通院や買い物ができるよう、コミバスやデマンドタクシーなどの取り組みが大きく広がり、県の支援が求められています。
このように時代の変化に応じて生まれる新たな政策課題や福祉ニーズにこたえるため、財源を生み出すのが行財政改革の責任だと考えます。それを踏まえ、新年度予算案と今後の財政見通しについて知事に3点質問します。
新たに示された今後の財政試算におりますと、実質公債費比率が2020年度に底をつき、その後、増加に転じるとの見通しが示されています。また、県の借金である県債残高の推移は、2019年度1兆6000億円であるのが、さらに増加し、10年後には約1兆7400億円となります。
要するに、これから先、県の借金が増加し、県の収入に対する毎年の借金返済の割合の増加する、ということが、今回示された見通しで明らかになっています。
この財政見通しの前提は、この後質問します県庁再整備の内行政棟と議会棟の建設費と周辺工事、現庁舎の解体、そして、県有建物の老朽化対策として毎年必要となってくる130億円のみであり、新たな建設工事は一切行わないという過程で試算されたとお聞きしました。このままでは県債残高の増加が避けられません。
高齢化社会の中での政策課題や県民の福祉ニーズが高まっていく中で、新たな政策決定をしたくてもあてる財源が出てこないという事態になるのではないか、非常に心配しております。
今回示された、新年度予算案の
・「清流の国ぎふ」を支える人づくり
・健やかで安らかな地域づくり
・地域にあふれる魅力と活力づくり
の3つの柱建て自体は私も同感であるが、さらに、県債が増えれば、結果として県民へのしわ寄せに繋がってしまい、県として力を入れるべき政策に影響が出かねません。県債総額を減らすことを考えるべきではないでしょうか。
古田知事は就任して以来、「政策総点検」にとりくみ、その後、平成22年度から平成24年度まで3年間における構造的な財政不足を解消するため「行財政改革アクションプラン」を策定し、行財政改革に取り組んできました。その中には、福祉医療費など県民の命綱ともいえるような福祉施策も削減されてきました。
そこで質問します。
1点目、これまでの財政運営の総括と、「岐阜県行財政改革指針2019」の狙いについて
中川ゆう子の質問
財政見通しを踏まえ、なぜ財政的に厳しい事態に陥るのでしょうか。どのように総括されてきたか?と、「岐阜県行財政改革指針2019」の姉来についてお聞かせください。知事の答弁
本県財政を振り返ってみますと、バブル崩壊後に国の経済対策に呼応して行われた多額の公共事業や、ソフトピアジャパン、飛騨・世界生活文化センターといった数々の県有施設の建設など、多年にわたり、大規模な公共投資を行ってきました。公共投資の額は、ピークの時の1998年度には3,713億円に上っております。また、1993年度から2001年度までの9年間、毎年3,000億円を超えております。
これに対し、2007年度以降は、1,100億円台から1,500億円あたりで推移しておりますので、近年の倍を優に超える投資がかつて行われていたことになるわけです。
このための財源、さらには、これに従って発行した県債の償還の財源ということで、ご指摘がありましたように1992年度に2,000億円を超えた財源対策活用可能基金の取り崩し、ピーク時の1998年度には1,500億円を超えた県債発行が行われてきたという風に認識をしております。
これに加えて、2004年度の「地方財政ショック」といわれる交付税の大幅削減といった要因が重なりまして、本県財政は深刻な状態に陥りました。そして2009年度には初めて起債許可団体になったわけであります。
こうした中、ご紹介いただきましたように、知事就任以来、「政策総点検」にはじまり、「岐阜県行政改革大綱」、「行財政改革アクションプラン」と、不断に行財政改革に取り組んできたところでございます。
その結果、実質公債費比率は2011年度の19.7%をピークに改善をしておりまして、2013年度をもって起債許可団体から脱却いたしました。直近の2017年度には94.0%になり、全国順位も44位から13位にまで改善するなど、持続可能な財政運営に向けて、道筋がつきつつある状況だというふうに総括しているところでございます。
他方、毎年130億円程度必要となる公共施設の老朽化対策、毎年30億円から50億円程度増加する社会保障関係経費など構造的に増嵩していく経費を抱えており、こうした中であっても新たな創生総合戦略に盛り込んだような重要な政策課題にもしっかりと対応していくためには、行財政改革の手綱を緩めることはできないという風に考えております。
こうした考えのもとで、今般、一定の前提の下での今後10年間の財政見通しを作製するとともに、これを参照しながら、今後の進むべき行財政改革の方向性、具体的な取り組みをお示しする、新たな指針を作成したということでございます。
この指針では、昨年度から実施しております事務事業見直しにつきまして、これを一段と進めるため、ITの専門家、先駆的な民間企業のノウハウを取り入れるほか、終期の設定を通じた政策的事業の廃止を含めた見直し、国債などの再建による基金運用の拡大、キャッシュレスで県税を納税できる仕組みづくりなどを盛り込んでおる次第でございます。
2点目、県債依存脱却に向けた県政運営について
いわゆる借金である県債残高を減らすには、長期にわたり、毎年の新たな借入額を減らす努力を続けるしかないと考えています。そこで、新年度予算案の中で新たな借り入れを行っている内訳をみると、最も大きいのは国の直轄道路事業負担金の約193億円、続く2番目が道路新設改良費約93億円、3番目が治山事業で約35億円ですので、借り入れの要因として国直轄道路負担金がダントツに大きいということです。中川ゆう子の質問
そこでお聞きしますが、必要なものであってもここにメスを入れないと、県債依存からの脱却はできないと考えるが知事のお考えをお聞きします。知事の答弁
県債の発行につきましては、これまで、将来の公債費負担に目配りしながら、私なりに節度ある発行に努めてきたという風に考えております。インフラ整備などに活用しております通常の県債について申し上げますと、ここ数年は、東海環状自動車道西回り区間の整備、あるいは防災減災対策などによって増加してきておりますが、2019年度で804億円となっております。過去のピークであった1998年度をとってみますと1,534億円ということで、半分近くまで抑制してきているということになるわけでございます。
大型道路事業などを見直し、県債を抑止制すべきであるとのご指摘かと思いますが、例えば、東関環状自動車道西回り区間の整備につきましては、すでに3万6千人に上る雇用を創出するなど、大きな効果をあげている東回り区間と一体となって、新たな地域連携が見込まれ、産業・観光発展をさらに加速させる絶大な効果があり、本県にとって必要不可欠なものと考えており、早期完成を目指し、国に対して強く要望しているところでございます。
また、近年の豪雨災害などを受けまして、とりわけ昨年7月の豪雨を振り返ってみますと、緊急輸送道路の整備や河川の改良といった防災減災に係る公共事業も、県民の安全安心を確保するためには、必要不可欠だというふうに考えております。
この度お示ししました新たな行財政改革指針では、これらの事業規模を維持したうえで、かつ県庁舎再整備を含めた老朽化対策経費、さらにはこれらに係る公債費も盛り込んで試算しておるわけであります。
繰り返しになりますがこれらの試算結果では、ピーク時の2011年度の19.7%に上った実質公債費比率が、向こう10年間は、現状の10%を下回る水準で推移するというふうに見込んでおります。
引き続き、過去の反省や財政再建に苦しんだ経験を踏まえつつ中長期的視点に立って、事業の優先順位を見きわめながら、節度ある県債発行に心がけてまいりたいという風に考えております。
中川ゆう子の再質問
実質公債費比率が全国8位となり、健全な財政運営になっているとのことだが、財政が健全かどうかは数値だけでは測れないものであり、物差しが違うのではないか。今後取り組むべき深刻な課題が沢山あれば、それは健全ではないのではないか。これまで公共投資を抑えてきたとのことだが、これから老朽化した建物の投資的経費が莫大に必要になってくる。そのあたりの認識が違うのではないか。県の財政見通しでは、今後県債残高が増加し、実質公債費比率を現状の10.0%を維持した場合でも、早くて5年、長くても8年後に収支差のマイナスが100億円を超えることが示されており、今のような余剰金では到底維持できない状況になるのではないかと考えるが、認識を再度伺う。
知事の再答弁
先々の赤字の問題がありましたが、この計算の中には巨額の臨財債の返済分、あるいは増嵩する社会保障といった分もございます。臨財債につきましては、国にしっかりと補填していただくということで、つとに申し上げているわけでありますし、それから社会保障につきましても、国の責任としてしっかりと手当てするようにと申し上げているということでありまして、いずれにしましても、何も薔薇色の財政見通しをお出ししているわけではありませんで、引き続き慎重な手綱さばきで、必要なことは一方でやりながら、抑えるところは抑えるということで、一つの目安としての実質公債費比率をそれなりの水準に保っていこうと、こういうことでお出しをしているということであります。中川ゆう子の再々質問
実質公債費比率は向こう10年間、10%を下回るとのことだが、県債の返済額は5年後に今よりも100億円、10年後には200億円増え、政策決定に使えるお金が減っていくことが財政見通しで明らかになっている。財政を維持するために福祉政策など新たな政策決定を我慢するのではなく、今から県民サービス棟構想を抑えるべきだと思うが、知事の考えを伺う。知事の再々答弁
実質公債費比率の前提について申し上げますと、歳出の方では増えていく社会保障関係経費、大型事業、例えば県庁建設とか、あるいは関ケ原の記念館とか、そういったものを除いて、原則来年度と同額で今後推移すると、つまり来年度分のボリュームを確保したうえで歳出を考えておるということでありますし、歳入も税収、これは国のいろんな試算がございますのでそれを使いながら、大型事業に係る県債については別にして、原則それ以外は来年度と同額で推移すると、そういう前提で計算したものがこの推計値でございますが、そういう推計値でやってみても実質公債費比率は向こう30年間11%を上回らないと。なお、昨年度の全国平均が11.4%ということでございます。3点目、激減している財政調整基金について
これは、年度途中で予期せぬ災害や景気の動向など財源が不足した場合に備えるもので、一般的には規模は標準財政規模の5%ほどという国会答弁もあり、岐阜県だと約200億円強に相当すると思われます。新年度予算案によると、この財政調整基金の年度末の見込は約60億円となっています。平成の初めには、財政調整基金を含めた財源対策活用可能基金は2000億円もあったのに、残りわずかとなっております。この財政調整基金については、急激に減ってきたので昨年も同様の質問をしました。
私の考えは、決して積立額が多ければ多いほどいい、と申し上げているわけではありません。やみくもに多額の基金をため込んでおくより、しっかり県民の暮らしのために活用するのが本来の自治体の役割であると考えています。
しかし、数年前まで300億円を超えていたにもかかわらず激減した要因は、県庁舎再整備に充てる基金を短期間で一気に積み増ししたからであり、そのうえ、基金が無い状態で、今後、毎年130億円が必要な公有施設の老朽化対策にも取り組む必要があり、無理な財政運営であるといわざるをえません。
新年度において、災害など不測の事態に備えられる最低ラインは確保する必要があることを、昨年に引き続きですが、申し上げたいと思います。
特に今年度は7月豪雨、豚コレラなど、不測の事態の連続でした。豪雨災害対策では、12月議会までで少なくとも約260億円に上っており、豚コレラ対策は今年度34億円強、来年度は新たに豚コレラの発生農場が出なくても17億円強が必要とのことです。
中川ゆう子の質問
多発する自然災害への備えだけでなく、今年は豚コレラの発生などまさに不測の事態の最中だといえます。そんな中、想定外の時に対応できない財政的余裕がない予算案で大丈夫なのでしょうか。財政調整基金の激減について知事はどのように考えているのか、お答えください。知事の答弁
財政調整基金は、財源に余裕のある年度に積み立てを行い、不足する年度に取り崩すといった年度間の財政調整を行い、安定的な財政運営を行っていくために置いているものでございます。この財政調整基金の残高は、提案しております当初予算では、来年度末に60億円に減少すると見込んでおります。ただ、これまでも、年度途中の執行段階における経費削減努力により、決算までに取り崩しを減額することで、残高の確保に努めてまいりました。
例えば、2017年度の財政調整基金の年度末残高を見てみますと、当初予算時には77億円と見込んでおりましたが、決算では200億円確保することができました。本年度につきましては、当初予算時には35億円まで減少するという見込みの元で、経費削減に努め、現時点では少なくとも170億円を確保できる見込みでございます。
今後もさらなる上積みができるよう努めてまいります。
こうした状況を踏まえますと、来年度当初予算で60億円となっております基金残高見込みにつきましても、引き続き、来年度の執行段階での経費削減に努め、残高を確保してまいりたいという風に考えております。