中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

12月議会(1)TPP(環太平洋連携協定)について

2016年12月14日 4:17 am
カテゴリ: 活動報告

TPPに対する県のスタンスをただす

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アメリカのトランプ次期大統領の「離脱」表明により、発行が事実上不可能になったTPPですが、国会では現在、会期を延長しTPP承認案と関連法案の審議が行われ、本日参議院本会議で採決が行われるとの情報もあります。

安倍首相は「日本で早期に批准し、アメリカと交渉していく」との考えを明らかにしていますが、ここで、このTPP、および日本の早期批准による問題点について申し上げたいと思います。そもそも、このTPP協定関連文書の和訳は一部にとどまり他国と比較しても情報量が少ないのが問題です。交渉経過資料は黒塗りで提供されるなど、明らかにされていない部分が多すぎますが、それでも国会での審議により問題点が明らかになってきました。

国内で大きな議論となった農産物に関しては、関税の撤廃や引き下げなど大幅な譲歩をおこなっています。農業関係者の多くの反対の声によって国会決議で「コメ、牛肉、豚肉、乳製品など重要農産物は除外する」とされましたが、無傷のものはありません。関税を撤廃しなかった品目についても7年後には関税撤廃に向け再協議が義務づけられました。国は「影響は軽微(けいび)」とする影響分析を出しましたが、その根拠となっていた輸入米の価格について、輸入商社が卸売業者に「調整金」を渡すことで、国産米より大幅に低い価格で出回っていた偽装が明らかになりました。政府の試算が、あやまった前提にもとづくものだったということです。

加えて、ISDS条項を設け、政府や地方自治体がとった政策が、海外企業と国内企業を差別・区別し海外企業の利益を侵害したとされれば、政府や地方自治体が海外企業から訴えられる仕組みが盛り込まれていることも見逃せません。政府調達だけでなく、地方自治体における地元企業を優先する施策(しさく)もこれにあたる可能性があります。国際的な事例では、最低賃金の引き上げや環境に配慮するためにとった地方自治体の政策が訴えられ、巨額の賠償を求められています。

国や地方自治体が、いち多国籍企業の利益より国民の利益を重視して政策決定することは当然であり、実際に岐阜県においても、県内企業や県内小規模企業応援のための施策に取り組んできたところです。問題は、海外企業から巨額の賠償を求められる仕組みがある事で、萎縮し、海外企業にも配慮した政策へと圧力が働く事です。TPPが発効すれば、中小零細事業者の受注機会がよりいっそう厳しくなることは明らかです。

これらを踏まえて、知事にお聞きします。今月2日、参議院のTPP特別委員会での参考人質疑において、東京大学の醍醐(だいご)名誉教授は、「発効が見込めないTPP協定を国会で承認するのは無意味にとどまらず、危険な行為だ」と指摘されたことは重大です。

安倍首相は「成長戦略の鍵を停滞させてはならない。日本が国会で早期に承認を得ることは弾みになる」と早期発効に強い姿勢を示しています。しかし、アメリカ次期大統領が撤退を明言している中、日本が、譲歩を重ねたTPP協定を承認してしまえば、日米2国間協議の場で、日本はTPPで譲歩した内容からのスタートになり、さらなる要求をのまざるを得ないという、不利な交渉になる恐れは多分にあります。

(このTPPには、県が取り組んできた地産地消や県内企業への優先発注の取り組みと矛盾する内容が含まれる。)

TPP発効が難しくなった今、国益を守るためにも、承認をすべきでないと国へ反対の申し入れをする必要があるのではないか。ご見解をお聞きします。

加えて、これまでの岐阜県のTPP関連予算を見ると、「TPP発効を見据え、海外市場や売れる農畜産物づくりなど、新たなフロンティアに挑む(いどむ)事業者等を支援する」として、今年度、150億円以上の予算がつぎ込まれてきました。(平成28年度当初132億2326万、補正18億1200万)

中川ゆう子の質問

TPP発効が事実上不可能になった今、TPPの発効いかんにかかわらず必要な予算もあるとはいえ、見通しの甘さは指摘せざるをえません。県内食料自給率は平成26年度で25%と全国の自給率と比較してもかなり低く、まずはこの自給率を向上させることこそ最優先で向き合うべきです。今後の予算編成においては食料自給率向上の観点を主軸にすべきと考えますが、方向転換の必要性についてどのように考えてみえるでしょうか。

知事の答弁

TPPにつきましては、本日参議院で採決が行われるというふうに伝えられておりますけれども、安倍総理大臣は11月14日の参議院特別委員会において、このTPPの発効に関して「厳しい状況になってきたということは、そう認識をしている。では、もうこれは終わったのかといえば決して終わっていない。まさに保護主義が蔓延しようとしている今こそ、我が国の決意を示していくことが大切であろう」との答弁をされています。

私ども岐阜県といたしましては、本日の参議院の動きを含めてこうした国の動き、これに対する米国を含めた各国の反応、さらには他の貿易経済交渉への影響など、充分見守っていきたいというふうに考えております。

さて、県では、TPPへの参加にあたり、国に対して、攻めと守りの両面から、交渉に取り組んでいただくよう申し上げてまいりました。具体的には、コメや牛肉など重要5品目を中心に守るべきものは守り、攻めの面では、例えば、本年5月にトップセールスを行ったベトナムにおける柿や牛肉の関税、マレーシアにおけるコメの関税など相手国の輸入障壁の撤廃・縮減を提案してまいりました。

最終合意内容には、概ねこうした内容が反映されるとともに、アメリカに対する牛肉の輸出枠拡大なども盛り込まれております。一方、本県農業の将来を俯瞰しますと、担い手不足や米政策の大転換、少子高齢化による集落機能の脆弱化などに加え、食料自給率が低迷するなど大変厳しい状況にございます。そこで、食料自給率引き上げに関して申し上げますと、国では平成37年度までに6ポイント引き上げる目標を掲げております。県においても、それと同程度引き上げるという目標を本年3月に策定した「ぎふ農業・農村基本計画」に盛り込んでおります。TPPの発効如何にかかわらず、「農業生産」と「食料消費」の両面からこの食料自給率アップに取り組んでまいりたいと考えております。まず「生産面」では、第一に、担い手の育成・確保が重要でございます。そのため、いつでも相談・支援が受けられる「就農ワンストップ総合支援窓口」の新設なども含め、来年度から5年間で2,000人の新たな担い手の育成を目指します。

「消費面」では、県産農産物の魅力を知り、食べていただくことが重要でございます。そのため、本年度は、県内の直売所や小売店、飲食店など545店舗と連携し、県産農産物の販売フェアや地産地消メニューの提供などを行う「地産地消Week」を夏と秋のそれぞれ1カ月間開催いたしました。今後も、こうした地元で生産したものを地元で消費する地産地消運動を展開してまいりたいと思っております。

また、6次産業化商品の開発、販売促進につきましては、名古屋にアンテナショップ「ジ・フーズ」を開店しておりますが、これを積極的に活用するとともに、世界農業遺産の認定を契機に立ち上げた「清流長良川の恵みの逸品」制度の活用などにより、本県産品のブランド力の強化を図ってまいります。

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