2024年10月24日 2:25 am
カテゴリ: その他
岐阜県警察による個人情報の不適切な取り扱いについて
Q 中川
風力発電計画をめぐり、岐阜県警大垣署の署員が住民4名の個人情報を収集し、風力発電事業者である中部電力子会社シーテックにその個人情報を提供したことについて、名古屋高裁は、岐阜県警による情報収集、情報提供を違法としました。一審判決から原告への賠償額は倍増し、さらに県が保有している個人情報の一部抹消を命じる判決です。岐阜県は、上告期限の10月2日に上告しないことを表明したため、これが確定判決となります。
情報収集の対象になったのは、地元で風力発電計画が持ち上がり勉強会を開いた住民らに加え、 この風力発電計画を知らず全くの無関係である住民など4名です。大垣警察署の署員は、彼らがつながると厄介になると述べ、病歴や市民運動の関与などの個人情報をシーテックに伝える情報交換を数回にわたって行ったとされています。
判決では、県の主張の通りだと、事案と無関係であっても全国民を監視対象にしてよいというものになってしまうと厳しく非難されています。市民運動を適視し、町を良くしようという平和的で社会に有益な活動でさえもできなくなり、これでは国民を萎縮させることにつながると指摘しています。情報収集してみないとわからないと主張される方もおられますが、 警察法第2条2項で、警察の活動は、不偏不党、公平中正を旨とし、卑しくも日本国憲法の保障する国民、個人の権利及び自由の干渉にわたるなど、その権限を乱用することがあってはならないと、フリーハンドで闇雲に際限なく情報収集できるものではありません。
岐阜県警は、これまで、一審で認められなかった部分について、控訴審で丁寧に主張していくと説明されていましたが、 関係警察官の証人については、県警本部長が拒否し、公表されている経歴のみ書面で明らかにするだけでした。事実認定においても、シーテックとの面会の事実は認められておりますが、議事録の内容や情報収集、提供等の認否は明らかにしておりません。私は、こうした姿勢は丁寧に主張するという姿勢とは かけ離れていると感じますし、改めて、県民の信頼回復のため、しっかり説明責任を果たすべきであると思います。
警察本部長にお聞きします。
(1)名古屋高裁での判決への対応について
情報抹消は、いつ、どのように行ったのでしょうか。原告には、10月1日に文書にて抹消したという一文のみ 通知で知らせていますが、丁寧に説明すべきではないでしょうか。また、裁判では証人を拒否し、事実関係の認否も多くを避けておられます。これでは信頼回復につながらないと感じます。裁判で出された事案について、事実なのかどうかを明らかにして、県民の信頼回復のため説明責任を果たすべきと思いますが、お考えをお聞きします。A 警察本部長
過日の名古屋高等裁判所での判決に関し、2点お尋ねをいただきました。
名古屋高裁での判決への対応についてお答えをいたします。県警察におきましては、控訴審判決を受け、 10月1日、判決において抹消が求められた原告らの情報を、県公安委員会委員長の立ち会いのもと、適切に抹消し、原告らには、判決を受けて情報を抹消したことについて、文書により通知をさせていただいたところであります。
控訴審判決において当方の主張が認められなかったことは残念ではありますが、その要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、当方からその目的、対応等を明らかにすることができなかったところにあると考えております。訴訟以外の場におきましても、その詳細については、警察の情報収集活動という事柄の性質上、当方から明らかにすることができないことについてご理解をいただきたく存じます。
Q 再質問 中川
岐阜におみえになったばかりで、私、初日の時のご挨拶もお聞きしておりまして。
これから県民とどうやって信頼関係を結んでいくかという大変難しい状況ではあると思ます。
この名古屋高裁での判決への対応ということで、情報抹消について原告に丁寧に説明したらどうですかという風にお聞きしました。なぜかと言いますと、これ判決文の中で、確かに指定したものについて情報抹消をしなさいということを言ってますけれども、さらに判決では、シーテック社に提供した情報以外にも原告らの個人情報を保有している可能性があるとしています。具体的に指定された情報以外にも自主的に抹消すべきものというふうに判決文の中で言っている。岐阜県警の自主的な対応というのを促しているわけで、真摯な対応が求められていると思います。一方的に消したからいいっていう姿勢には、私は大変疑問を感じました。原告への丁寧な説明、それからこういった自主的な対応についてもやっていくべきだと思いますが、 その点、原告に丁寧に説明をした方がいいんではないかという点について、再度お聞きいたします。
A 県警本部長
県警察におきましては、今回の判決に従いまして、この判決において抹消が求められた文書、その存否を精査した上で これを確認し、その上で然るべく抹消の措置を講じたところであります。また、県警察におきましては、この情報の抹消後、速やかに原告らにその旨を通知させていただいたというふうに考えております。
(2)名古屋高裁での判決を踏まえた個人情報の収集及び取り扱いについて
Q 中川問題となった個人情報の違法な収集や取り扱いについて、これまで警察庁警備局長は、参議院内閣委員会において、通常行っている警察業務の一環と答弁されています。この通常業務、通常行っている警察業務の一環が違法と判断されたということは、その重大性を認識すべきです。
判決においては、この事案で問題になった個人情報の収集及び取り扱いについて様々な角度で厳しく指摘がされていますが、これは今後の警察業務全体に関わるものだと私は感じました。判決文の中で私が特に重要だと感じた箇所を3点申し上げます。
まず、 市民運動を際限なく危険視して監視を続けることが憲法に違反しているという点です。企業や公共団体が行う事業が不当なもので、住民が反対することが正当であればあるほど着実にそれは市民運動に発展していく可能性があります。岐阜県の主張によれば、正当な主張であるほど監視の対象になってしまう。少なくとも大垣警察、岐阜県警察に関する限り、実際にそうなる可能性が高いと判決で指摘しています。平穏な方法による市民運動は社会の発展に重要だという視点がこの判決に表れていると感じました。
2点目は、不偏不党、公平中正に反しているという点です。風力発電事業を進めるか 中止させるかというときに、大垣警察の警官らは、シーテック社による事業の推進を援助し、これに反対する原告らの活動を妨害する目的を有しており、これは明らかに違法だと判決で指摘しています。
3点目は、判決において、大垣警察が住民間トラブルを発生させようとしていると指摘している点です。これも引用しますと、むしろ、シーテック社及び大垣警察が相互に交換した情報を利用した情報操作等によって地域住民を分断させ、住民間のトラブルを発生させようとしているものと言えるのであり、平穏な大垣市が維持されないようになり、公共の安全や秩序が害されることにもなり得るものであって、まさにマッチポンプとも言い得るものであるとまで判決では断罪されている点です。警察業務が 住民間のトラブルを発生させ、公共の安全や秩序が害されることはあってはなりません。 従来の個人情報の収集及び取り扱いを大きく見直す必要が出ていると思います。
近年、特に個人情報の保護の観点は、国民の間でも高い意識が持たれるようになっています。 自分の情報がどのように集められ、どう扱われているのかわからない県民は不安を感じます。また、 こうした個人情報の取得、取り扱いについて、今回のように恣意的な運用が行われないように、第三者のチェック体制や法規定などの整備が必要だという専門家の指摘も多く見られます。 これは、国民を萎縮させないために大事であるとともに、活動を行う警察にとっても 県民との信頼回復には重要だと思います。
そこで質問です。
裁判で違法な情報収集、提供であるとされましたが、 現在の業務のどこが問題で、何が原因と捉えていらっしゃるでしょうか。また、警察の情報収集全体を否定するものではありませんが、情報収集する対象や情報提供が際限なく広がり、人権を侵害しないような仕組みづくりが必要です。県民の不安を払拭し、信頼を取り戻すために、 法規定の必要性についてはどうお考えでしょうか。
A 県警本部長
名古屋高裁での判決を踏まえた個人情報の収集及び取り扱いについてお答えをいたします。
今回の控訴審判決において当方の主張が認められなかったということは残念ではありますが、その要因は、やはり警察の情報収集活動という事柄の性質上、当方からその目的、対応等を明らかにすることができなかったところにあると考えております。法整備の必要性等につきましては県警察はお答えする立場にありませんが、いずれにしましても、警察法第2条に基づく情報収集活動は、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守して行われるべきことは当然でありまして、今回の控訴審判決を踏まえ、このことについて改めて徹底してまいります。また、個人情報の取扱いに当たっては、個人情報の保護に関する法律等の関係法令に基づき、引き続きその適正を図ってまいります。
Q 再質問 中川
この上告を見送って確定判決を受けた要因というのが、目的や対応を明らかにできなかったことにあるとされておられます。しかし、これが事実認定されて、憲法違反だし、違法だという風に言われたわけです。 そうであるならば、何を改めるべきかというのをしっかりと県民に明確にしていかないと再発防止につながらないと思います。もう一度、この点について伺いたいと思います。特に、どこに原因、どこが問題で何が原因なのか、そして、法規定についても答えることはできないと言われていますが、相当性を欠いているのが今回の判決です。そうであるならば、その点についてもお答えください。
A 県警本部長
警察法第2条に基づく情報収集活動は、 目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守して行われるべきこと、これは当然であります。今回の控訴審判決を踏まえ、このことについて改めて徹底してまいりたいと考えております。また、個人情報等の取り扱いについても、関係法令に基づき、引き続き適正を図ってまいりたいと考えております。また、 法整備の問題につきましては、先ほども申し上げた通りでありまして、県警察においてはお答えする立場にないと考えております。
Q 再々質問 中川
これまでの裁判費用、それから賠償金、合わせると1000万円近い お金が使われると、それが今の見通しです。そうであるならば、県民の税金であって、誠実にきちんと説明をいただきたい。警察の業務が住民間のトラブルを発生させようとしているものだというところまで言われているわけですから、引き続き、適正、適切に対応していくということではなく、何を見直すべきかというのを明確に県民に説明していただきたいと思います。いかがでしょうか。
A 県警本部長
今回の控訴審判決、これにおきまして、私ども当方の主張が 認められなかったというのは誠に残念ではありますけれども、その問題や原因が何かということで申し上げますと、やはりその要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、当方からその目的、対応等を明らかにすることができなかったことにあるいう風に考えております。いずれにいたしましても、当方の情報収集活動を違法とした今回の控訴審判決、これについては重く受けとめたいと考えております。