中川ゆう子

中川ゆう子岐阜県議|日本共産党

9月議会(2)地域医療構想について

2016年10月12日 7:15 am
カテゴリ: 活動報告

中津川、坂下病院の実態を受け質問

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地域医療構想は、国の「医療介護総合法」に基づき、全国の都道府県で策定が進められており、岐阜県においてはこの7月に策定されました。

岐阜県の地域医療計画によると、これは「将来あるべき医療提供体制を示し、医療機関関係者のみならず、介護サービス事業者のみなさま、医療を受ける住民のみなさまも含め、多くの関係者がこの構想に基づいて行動していただくための指針となるもの」とされています。

高齢者が可能なかぎり住み慣れた自宅や地域で日常生活を営むことができるよう、体制を整えることは必要ですが、それは本人やご家族一人ひとりの人権や希望が尊重されることが前提です。そして同時に、都市部だけでなく僻地でも入院治療がしっかりと保障された医療制度を責任もって構築することは国と地方自治体の役割であることに変わりはありません。

問題なのは、国での議論が、社会保障費や医療費を抑制する目的からスタートしており、医療や介護の拡充ではなく、実際は、縮小と削減の方向が打ち出されているということです。

都道府県は国のガイドラインに基づいて、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」ごとに必要な病床数を設定し、現在のベッド数が多ければ、県が設ける「協議の場」において協議を行っていく。とされていますが、昨年6月の第一次報告では、全国で15万から19万床の削減が見込まれていることは明らかになっています。この、国が示した「将来あるべき医療体制」必要病床数の算定方式には、限界があります。

たとえば・・

・実際の入院患者数で推計していますが、不安定雇用や経済的な問題で受診していないなど潜在的な需要が広範に存在しているのも関わらず、考慮されていない点

・入院日数の短縮化がすすめられ、平均在院日数が短くなったが、それも考慮されていない点。

・算定の前提となっている病床の稼働率が75%から92%(慢性期)と非常に高く設定されている。季節や病気の流行で病床の空きは大きく変動する。高すぎる稼働率設定は逆に危険であるという点。

などです。

構想では2025年が目途になっていますが、ちょうど団塊の世代が後期高齢者となる時期です。そして、その10年後には3人に1人が高齢者という時代。今以上に医療体制を整えておきたいところですが、岐阜県では病床再編はあるものの、全体として約3000床の削減が将来あるべき医療体制とされています。高齢者が増え、医療ニーズが増大するのに対し、結果として今より少ない病床が「将来あるべき医療体制」というのは大きな矛盾です。

こうした国の策定方法に対し、全国知事会は「急激な見直しで、医療提供体制が崩壊する恐れもある」と表明。富山県知事は予算特別委員会で「今回の国の推計手法については、本当にそのやり方でいいのか検証する必要がある」と説明しています。また、徳島県議会では「国が一方的に病床削減を強いることは、地域の医療ニーズに十分応じることができなくなる恐れがあるばかりでなく、結果的に地域の医療提供体制を崩壊させることになりかねない」との意見書を国に提出するなど、全国で懸念が相次いでいます。

いま、中津川市において、国保坂下病院の入院機能をなくし、外来は内科と人工透析部門の診療所に再編し、中津川市民病院に集約するという計画が明らかになり、大きな問題になっています。中津川市民病院と坂下病院は車で約30分という距離です。母親が坂下病院に入院中という付知地域の方は「坂下病院は車で20分だが、市民病院だったら40分はかかる。冬には雪も降る。働きながら病院に通うのはとても無理」と訴えておみえです。これは、ある特定の地域の問題でなく、今お話した国や県が進める病床の再編と削減の流れで起こった全県的な問題であります。

国保坂下病院は2005年の合併時に、「坂下病院を存続させる」という協定のもと中津川市所管となっており、医療機関が少ないこの地域の住民にとってはなくてはならない病院です。現在の建物は2001年に新築され新しく、稼働していないベッドを除いても一般病床149床と療養病床50床、高度医療機器も備わっており、この地域の医療機関の中核を担っています。

坂下病院を支える会のみなさんが行った「坂下病院を合併時に約束したとおり現行のままの「坂下病院」としての存続をもとめる署名」は人口8万人あまりの中津川市で約一か月の間に2万3068人分集まっております。また、地元の区長会のみなさんも坂下病院の機能存続を求める署名を集め、市町に意見書を提出しています。

(1)中津川市国民健康保険坂下病院の診療所化をめぐる中津川市の説明について

中川ゆう子の質問

3月議会、健康福祉部長は私の再質問に対し、この必要病床数について、「一つの指標、参考値としての位置づけ」であり「地域の実情に応じて話し合いを持ち、病床数をどうするかということを求めていく」と答弁されています。一方、この7月に中津川市が行った「病院事業地域説明会」では、病院の現状と今後について機能の縮小か廃止のシナリオが提示され、これらのシナリオ策定の背景として、「岐阜県全体で約3000床、東濃地区で約700床の削減を目標に取り組む」という県の動きに基づいていると明記しています。これは、県の説明と異なっており、この中津川市の説明は適切でないと考えるがいかがでしょうか。。

健康福祉部 医療・保険担当次長の答弁

地域医療構想は、将来の医療需要について共有し、地域の実情に応じて、各圏域の医療関係者、市町村、住民で話し合い、それに適した医療提供体制を構築するためのものです。そのため、地域医療構想に掲載した将来の必要病床数は、不足している病床機能を把握するための参考とすべき指標であり、削減を求めるものではありません。

中津川市に対しては市が7月と9月に開催した両説明会においての地域医療構想の説明は不適切であり、正しくて「リハビリテーションや在宅復帰に向けた医療を提供する病床が、東濃圏域で約500床不足することが見込まれている」という指導をしています。

(2)地域医療構想の推進にともなう地域医療の危機とその対応について

中川ゆう子の質問

坂下病院の診療所化の問題は、決して医療需要がなくなったわけでも、在宅治療の前提が構築されたわけでもありません。地域医療構想に加え、医師不足と経営悪化が理由だと明確に述べています。いま、赤字の公立病院は広がっており、どこも同様の問題を抱えています。今回の坂下病院をめぐる問題は、県が地域医療構想で必要病床数を出したことが引き金となり、地域医療の危機を招いたものであり、これはいち自治体やいち病院の問題ではないと考えます。市町村への説明はどうであったのか、疑問が残っています。今後、地域医療構想の推進にともなうこうした地域医療の危機をどう受け止め、どのように対応しされるのかお聞かせください。

健康福祉部 医療・保険担当次長の答弁

地域医療構想の趣旨につきましては、これまでも機会を捉えて市町村や医療関係者などに説明してきており、今後も引き続き丁寧に説明してまいります。なお、先ほど申し上げた通り、地域医療構想は関係者が将来の医療需要について共有し、それに適した医療提供体制を構築するためのものであり、病床削減を目的としていません。そのため、今回の坂下病院の件は、地域医療構想の推進に伴って生じたものではないというふうに考えています。

中川ゆう子の再質問

病床の削減を目的としていない、地域の医療需要に適した医療体制を構築するとの答弁があったが、実態は必ずしもそうはなっていない。地域に適した医療体制をつくっていくには、一律に推計値や参考値を出す国のやり方ではなく、地域の医療実態を踏まえた医療計画を作ることが必要ではないか。

健康福祉部 医療・保険担当次長の再答弁

知事がご答弁申し上げた通り、将来の必要病床数の推計は、医療法において各都道府県に地域医療に定める事項として義務付けられているものであり、またその推計方法も医療法施行規則、及び国の示すガイドライン等により定められており、現時点においては適正なものであったというふうに考えております。この数値、医療機関に病床の削減を求めるものではなく、地域で不足している病床機能を把握するためのものでもあります。このため、我々としては市町村、医療関係者等に対して、丁寧に説明を行ってまいります。

(3)地域医療構想による病床数削減と医師確保の取り組みとの不整合について

中川ゆう子の質問

経営悪化(危機)の原因は医師不足にもあると思われます。医師不足に対しては、県も独自の取り組みを進めてみえますが、総合的で高度な医療体制が整った地域医療があってこそ、医師もその土地で働きたいと思えるはず。地域医療構想による病床数削減と医師確保の取り組みとの間に不整合があるのではないか、と思いますがいかがお考えでしょうか。

健康福祉部 医療・保険担当次長の答弁

地域医療構想は地域の実情に応じた将来の医療提供体制を構築するためのもので、現在稼働している病床の削減を求めるものではありません。そのため、医師確保の取り組みについては、地域医療構想の推進と不整合は生じていないものと考えております。

(4)地域の実情や県民の声を踏まえた地域医療構想の在り方に関する国への要望について

中川ゆう子の質問

今回の問題を受けて、私は坂下病院を支える会のみなさんや中津川市のみなさんに会い直接お話をお聞きしました。高齢になっていくつもの科にかかるようになったという方は、「今の病院機能を残して欲しい、坂下病院が頼りだ」とおっしゃいましたし、3回目肺炎で入院した男性は「身近なところですぐ入院できたから助かった」とおっしゃいました。「中津川で長年頑張ってきた『いのちの砦』だ」との訴えもありました。坂下病院がいかに地域医療を担っているかがよくわかりました。この問題の大本は、病院の再編と削減が盛り込まれた国のガイドラインと県の地域医療構想です。これは中津川市だけの問題ではなく、岐阜県民全体に関わる問題です。

中津川市へは本当に多くの署名が出されており、多くの波紋を呼んでいますが、地域医療を担うという地方自治体の役割りから見て、この声は重く受け止めて欲しいと思っております。知事がこれらの声を受け止めて、この地域医療構想(病床数の指標)について国へ要望する必要があると思いますが、お考えをお聞きします。

知事の答弁

この地域医療構想をどのように理解するか、どういうものであるかということについて、混乱があってはならないのではないと思っております。ご指摘のありました中津川市の説明は、私どもとしては不適切であったという風に考えております。改めて、この地域医療構想について申し上げますと、「医療介護総合確保推進法」に基づき、2025年の医療需要を踏まえて、効率的かつ質の高い医療提供体制や地域包括ケアシステムを構築するため、都道府県に対し2次医療圏毎に策定を求めたものでございます。

この構想は、平成27年6月の厚生労働省の通知で明らかにしておりますが、不足している医療機能の充足を求めるものであって、稼働している病床を削減させるような権限は存在しないという風に明らかにされております。また、地域の実情に応じて、都道府県、医療関係者等が話し合い、将来の医療需要の変化の状況を共有し、それに適合した医療提供体制を構築するための、あくまで関係者間による自主的な取り組みが基本であるという風にも言われております。

なお、お話のありました推計値につきましては、国のガイドラインで示した計算方法により計算した参考値としての位置づけであるというふうに言われておるわけでございます。こうした中で、本県といたしましては、この「医療介護総合確保推進法」と、そして今申し上げました厚生労働省から来ております通知の考え方を前提として、5圏域ごとに設定した地域医療構想調整会議を開催し、地域の医療関係者や医療を受ける立場の方、地元市町村などからご意見をいただいた上で、岐阜県医療審議会に諮問し、本年7月に「岐阜県地域医療構想」として策定したところでございます。

その結果、本県では、現時点で判断いたしますと、全ての圏域で、リハビリテーションや在宅復帰に向けた回復期の医療を提供する病床の確保、在宅医療の更なる充実が、2025年までに必要であるというふうにしたところでございます。そこで、県としては、県病院協会や県医師会と共催で、今月から各圏域ごとに医療関係者からなる検討会を開催し、地域医療構想を踏まえるとともに、地域の実情に応じて、2025年に向けて効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するよう検討を行ってまいります。その際、検討会として、あるいは県として、必要に応じて国への要望も行うことになろうかと考えております。

中川ゆう子の再質問

各都道府県の必要病床は、国がガイドラインを示して一律に参考値を出す性格の物ではない。あくまでも地域医療を担うのは都道府県や地方自治体であり、実際にそのような取り組みがされてきた。「推計値は参考値」というが、実際に数字が出されれば、そこへ誘導する力が働く。実際に、長野県南木曽町議会での質問に対し、町長は「国や県が定めている医療構想の余波をまともに受けていると考えてもおかしくないと思っています」と答弁。また、中津川市でも「国の流れでやっていかないとますます苦しくなることが予想される」との答弁がなされた。だからこそ、根拠が乏しい数字はたとえ参考値であっても出すべきではないと考える。中津川市で出された署名はこうした国の矛盾の現れであり、一律に参考値を出すようなやり方を撤回するように国に要望すべきではないか。

知事の再答弁

ここでも先程来申し上げました通り、混乱があるわけでございまして、こういう混乱が生じかねない流れはどうであるか、という議論はいろいろあろうかと思います。この、一定の方式によってマクロ的に計算をして参考値を出すというのは、法律に基づいてやっているわけでございます。したがって、私どもとしては法律に基づいて、参考値としてこれはこれで出していただいた、と。あくまで、参考値であって、数字ありきで議論を進めるということを考えているわけではありません。

今後、検討会でいろんなことを議論してまいりますので、そのいろんなことをまさに地域の実情に応じて議論をしていくという中で、実りのある、意味のある内容のものを作っていけたらと思っておりますし、そういう内容に関わる中で、国への要望ということも当然あろうかというふうには思っております。法律にのっとって、参考値として数字を出すという、これは一つのルールとしてある訳でございますので、これをもう一回蒸し返すということではなしに、意味のある医療計画を作っていくということについて、検討会を中心にしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

中川ゆう子の再々質問

次長答弁で「法律に基づいてやっている」とあったように、法律の持つ権限は強い。起こっている問題は地域医療の中核をなくし、集約をするというもの。岐阜県で今起こっている状況について、数字や根拠をしっかり掴んで、知事が国に対し「一律に数字を出すことは控えたい」という要望を出してもらいたいと思うが、いかがか。

知事の再々答弁

先ほども申し上げましたが、そういういろんな議論が立法の過程ではあったのではないか、と思いますし、数字が独り歩きするという懸念も理解できるところでありまして、そういう現在の法体系の是非論といいますか、これはいろんな考え方があろうかと思いますが、これに対して私どもとしては、あくまでも、先ほども申し上げましたけれども、厚生労働省の通知からですね、不足している医療機能の充足を求めるものである、と。稼働している病床を削減させるような権限は、県知事には存在しない、と。また、地域の実情に応じて自主的に話し合って、適切な医療提供体制を構築するんだ、というふうに言われておりますので、私どもは、数値ありきではなしに、これから検討会を通じて、地域の実情にのっとって、しっかりと議論を組み立てていきたいと、そういう中での、要望なり意見というのは当然出てこようと思っております。既に出来上がった法体系について、もう一度チャレンジをしようということよりは、より検討会で生産的な、前向きな議論をしていったほうがいいのではないかというふうに思っております。

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