2025年10月8日 5:41 am
カテゴリ: 活動報告
3、差別や排外的な考えに対するヘイトスピーチ解消法に基づいた対応について
【質問 中川】「本邦外出身者(ほんぽうがいしゅっしんしゃ)に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」に基づき、差別や排外的な考えに対する対応についてお聞きします。
ある週刊誌に、特定の国籍の方々を名指しし「旧岐阜県庁舎の解体工事に大量にそういった方が来る」という記事が掲載されました。その記事を読んだ方々から、犯罪が急増する、生活保護の不正受給、医療費の踏み倒しなど、事実に基づかない不正確な情報をもとに、「怖い」「取り締まってほしい」などの匿名のメッセージが寄せられました。不安や心配の気持ちから無自覚に差別的な発想になっていることがわかります。また、ある県内の認定こども園での多文化に触れる体験学習を紹介するTV報道に対し、SNSなどで複数の否定的なメッセージが私のもとに寄せられました。
岐阜県は外国籍の方の人口が全国13位と高く、昔から共生して社会が成り立ってきております。このこども園での取り組みもこうした相互理解をはぐくむ重要な取り組みです。
個人的な話で恐縮ですが、30年以上前、親元を離れ単身、海外で過ごしておりました。短い期間でしたが、当時は今のように日本の文化が知られておらず、また日本人、アジア人に対する偏見も強かったと思います。当時、12,13歳のこどもでしたが、そんな子どもに対しても、明らかに憎悪の感情をむけられる、人として扱われない事が何度もありました。差別されることを覚悟していても、やはり恐怖心はとめられません。なぜなら、国籍、人種に関わる言動は、私の存在そのものに関わるからです。
一方で、自分の知らない日本の文化に興味を持ち、知ろうとして迎え入れてくださる方々もたくさんいました。そういう方に本当に助けられ、学ばされました。当然ですが、国籍、人種、性別などを理由にした言動は差別です。今、間違った情報や差別により、外国籍の方への偏見や多文化共生の取り組みへの批判がネットを中心に広がっています。こうした排外的な考えの広がりは、直接的、間接的に多くの方々を追い詰めます。
県では第4次人権施策推進指針を策定し、ネット上の誹謗中傷やさまざまな差別偏見など、解消に向けて取り組むべき人権問題に対し施策を行うとし、啓発だけでなく、早期発見、迅速な対応、持続的な取り組み、不断・普段の検証も大切と記しています。差別はいけないという単なるかけ声ではなく、今こそ、こうした指針に基づいた具体的な取り組みが求められています。
(1)事実に基づいたデマへの対応について
知事にお聞きします。排外的な考えが広まっていることを受け、全国知事会で採択された青森宣言では、各知事が排外主義を否定し、多文化共生をめざす立場を強調されました。同時にこの問題の背景には、低賃金や、日々の生活費や病院代に苦しむ住民の実態があると感じています。そこには社会保障制度の貧弱さや物価高対策がほとんど進んでいないなどの問題がある事も行政はしっかり受け止め施策に反映させる必要があると思います。
そこで質問ですが、デマに対しては、数値をしっかり示し、事実をしっかりと広めていっていただきたいと思います。県としてこのような状況をどのように受け止め、どのように取り組みますか。
【答弁 知事】岐阜県では、かねてから県内に在住する外国人の方々については、地域社会を構成する「外国籍の岐阜県民」と認識して、お互いの文化や考え方を尊重しながら、円滑にコミュニケーションを図ることにより、「すべての県民が働きやすく、暮らしやすい地域社会」の実現を目指してまいりました。私自身、総合企画部の次長として多文化共生の担当で、まさにこれを推進しておりました。そのため、多文化共生意識の醸成など様々な取り組みを進めているところでございますけれども、特に、地域の活力の維持、向上を図っていくため外国人材を雇用する企業に対する伴走型のコンサルティング、外国人介護人材受入れに対するセミナーなどに取り組んできたところでございます。
そうした中にありまして、議員のご指摘のとおり、現在、日本国内において、特定の民族や国籍の人々を、合理的な理由なく一律に排除・排斥することをあおり立てたり、見下したりする行為が生じているところでございます。こうした排外的な言動に至る背景には、将来への不安や、自身の置かれた現状に対する不満があるのではないかという意見があることは理解をしております。
しかしながら、こうした差別や排外的な動きは、決して許されるものでは無く、社会の健全な発展という観点から好ましいものではないと認識しております。私もEUの職員として海外で働く中で、差別というものの恐ろしさ、悲惨さを、しっかり認識しております。
そして、県では、人権啓発センターや在住外国人相談センターなどを通じまして、人権侵害となるSNSへの投稿などを把握した場合は、法務局など関係機関と連携してプロバイダヘの削除を要請するなど、事案解決に向けた取組を実施することとしておりますが、現在のところ、まだそうした事案は生じておりません。
一方で、外国人材の活用に関する県の事業を、移民政策と誤解した県内外の方から、県のホームページ等を通じて、犯罪の急増を懸念して受入れ反対といったご意見をいただいた例があります。ちなみに、外国人犯罪の検挙件数ですが、本県では令和6年は令和5年と比較すると20. 4%の増とはなっておりますけれども、3年前の令和3年と比較すると2.2%の増に留まっており、必ずしも急増しているとはいえないと思っております。
(2)学校現場における差別を見抜く目を養うための取り組みについて
【質問 中川】続いて教育長に伺います。当然ですが、学校は子どもたちにとって安心安全な場であるべきです。「日本人ファースト」という言葉が一気に広まり、差別に繋がりかねない問題に対し、さまざまなルーツを持つ子どもたちを守るとともに、子どもたちを加害者にさせないための取り組みが求められています。
正しい知識に基づき、差別を見抜く教育が求められていると思いますが、教育委員会としてどのように学校現場で取り組んでいかれるでしょうか。お考えをお聞かせください。
【答弁 教育長】根拠のない噂や、フェイクニュースも含まれる情報が溢れる現代社会に生きる子供達には、見聞きする情報が事実か、差別や偏見ではないか等を見極め、自分や社会がどうあるべきかという視点で考え、判断し、行動できるようになってほしいと願っております。そのため、各学校では、岐阜県人権教育基本方針のもと、外国人差別などの様々な人権問題について、認識を深める学習を展開しております。
また、学校生活の中で、外国人児童生徒の生活習慣や文化の違いが、差別や偏見につながることがないよう、教職員の外国人児童生徒への支援や周りの児童生徒への指導の在り方を示した手引も作成しているところです。各学校では、子供達の悩みや不安、差別につながりかねない言動を把握するため、定期的にアンケート調査を実施するなど、トラブルの早期発見、早期対応を図っております。
今後も、互いに尊重し合う多文化共生の考え方に基づく教育と、子供達が安心して生活できる学校づくりを徹底してまいります。





