2025年1月15日 2:57 am
カテゴリ: 活動報告
2024年第5回定例会 中川ゆう子県会議員の代表質問及び県当局の答弁
(2024年12月13日)
3、リニア中央新幹線の整備事業について
中川

6月議会で、リニア中央新幹線のトンネル工事による地下水の水位低下、枯渇について質問いたしましたが、 事態が起きてから半年以上が経過し、いまだ先の見通しが持てておりません。さらに、その付近では地盤沈下が続いており、11月27日の岐阜県環境影響評価審査会地盤委員会、 以下、地盤委員会と申し上げます、この地盤委員会では、地盤沈下が大きい地点は、資料によると11月19日時点で5.9㎝となっていることが明らかになりました。かなりのスピードで沈下が進んでおります。
この地盤委員会には地元瑞浪市の市長がご出席され、地盤沈下による建物への深刻な影響について発言されました。さらに、地盤沈下を止める対策、地下水の水位回復等の対策、今後の見通しを住民に説明することを要望されています。切実な訴えであり、住民として当然の要望だと思い、お聞きしておりました。JR東海はしっかり受け止めるべきです。
そこで、2点、知事にお聞きします。
(1)水枯れや地盤沈下への対応について
1点目です。地盤委員会では6つの論点のもと議論が続けられていますが、水位の改善は見えず、先の見通しは示されていません。住民は水位を戻してほしいという願いを持っていますが、県も同じお考えでしょうか。水枯れや地盤沈下という問題に対して、住民の側に立って対応を続けてほしいと思います。お考えをお聞きいたします。答弁 知事
瑞浪市大湫町においては、井戸やため池21か所での水位低下あるいは枯渇に加えて、地盤沈下も進行し、地域の皆様は不安な気持ちで生活されているという風に承知しております。先月開催した第8回岐阜県環境影響評価審査会地盤委員会では、瑞浪市長が出席され、こうした地元の声と合わせて3点について市の考えを述べ、JR東海にその対応を求められました。1つ目は、地盤沈下の原因として考えられる地下水位の低下を止めるための湧水対策を速やかに講じること。2つ目は、地下水位の回復に向けた対策を速やかに検討し、実施すること。3つ目は、これら対策に係る見通しを早く示すことであります。
これまでの8回に渡る地盤委員会での議論を通じ、「地下水位の低下」と「地盤沈下」に関する課題はある程度クリアになってきたのではないかと考えております。
まず、「地下水位の低下」につきましては、地盤委員会において、トンネル湧水が増加した時期と地下水位が大きく低下した時期の相関は明確であるという風にされております。これに対し、JR東海は、鹿児島県の北薩トンネルでの湧水止水対策に効果のあった、岩盤の亀裂にセメントなどの薬液を注入する工法を採用することとし、委員会はその実施経過について審議してまいりました。しかし、7月に鹿児島の同トンネル内で土砂流入事案が発生しました。これを受け、8月にはJR東海から、薬液注入のうち高圧で亀裂に薬液を流し込む「本注入」について、「見直す可能性も含めて検討する」旨の報告を受けたところであります。その後、3回の地盤委員会を開催しましたが、未だJR東海から具体的な対策が提案されていないという状況でございます。
次に「地盤沈下」につきましては、8月にJR東海から「地表面の低下が見られる」旨の報告がありました。地盤委員会の審議では、トンネル湧水による地下水位の低下が地盤沈下に関与している可能性があるとされております。これらを受け、地盤委員会ではJR東海に対し、止水対策としての薬液の本注入を実施するのかを問うとともに、見直す場合には代替案の提示を求めております。併せて、これら対策について、今後の見通しを早急に示すよう求めております。
JR東海には、このような地盤委員会の指摘を踏まえ、次回の会合において、スケジュールを含めた検討結果を提示していただきたいと考えております。また、この問題は、住民生活に直接関わる問題であるため、情報の共有、丁寧な説明により、地元の方々に寄り添いつつ、早急に進めていただきたいと思っております。
(2)事業の再検証について
中川
続いて、リニア中央新幹線整備事業そのものについて伺います。これまで県は、地域活性化を期待し、リニア中央新幹線の整備促進を強く求めてきています。しかし、地下水の水位低下や枯渇が起こり、付近で起きている地盤沈下は止まっておらず、いまだに効果的な対応策が見出せておりません。JR東海は、不安を抱える住民に今後の見通しすら示せていない状況です。これは、大湫地域だけでなく、 他でも起こりうる可能性がある問題です。その状況下で整備促進を求め続ける姿勢に違和感を持っております。
私自身は、このリニア中央新幹線は、採算が成り立たないこと、 電力効率の悪さ、環境への影響、事業費の増大などの理由で、整備そのものに、もともと反対ではありますが、住民の中には、リニア整備事業に反対ではないという方も、少なくとも、これまでの自然や環境をこの先も守ってほしいという思いを強く持っておられます。この事業に対する意見は様々であっても、地域に根付く文化や自然環境、住民の日々の暮らしを犠牲にして進める事業では、地域の活性化、地方創生は成り立たない、ここは大事にしていただきたいと思います。
2点目の質問です。
水枯れや地盤沈下など、想定していなかった重大な問題が起きております。暮らし続けることができないという事態です。リニア中央新幹線整備事業が引き起こしている問題を整理して、この事業の必要性について再検証すべきではないでしょうか。また、国に再検証を求めるべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。
答弁 知事

しかしながら、その前提として、工事を進める上での安全性の確保、地域の自然環境や住民生活の適切な保全が図られなければなりません。平成31年4月に中津川市山口地区の中央アルプストンネルで土砂崩落による陥没がございました。また、令和3年10月には中津川市の瀬戸トンネルで肌落ちに伴う死亡事故がございました。今年7月末にも多治見市大針町の第一中京圏トンネルでは肌落ちに伴う負傷事故が発生いたしました。そして、本年2月以降、瑞浪市大湫町におけるトンネル湧水による地下水位の低下や地盤沈下の問題が生じているということでございます。
県としては、こうした問題が起きた時には「急がば回れ」の精神で、一度立ち止まって、専門家の知見を活用し、課題を一つひとつ丁寧に拾い上げ、地元の理解を得ながら解決に向けて取り組んでいくことが重要であるというふうに考えております。このため、トンネル工事の問題では、安全対策の観点については「岐阜県リニア中央新幹線建設工事安全対策専門家会議」、環境保全の観点については「岐阜県環境影響評価審査会地盤委員会」においてご意見を伺った上で、知事意見書や徹底事項を提示することとしております。さらに、これら問題への適切な対応については、本県の提案により、沿線都府県から成る「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」の決議に盛り込み、JR東海及び国に対し要望を行ってきております。
再質問 中川
続いて、リニア中央新幹線の整備事業について、2点お答えいただきましたので、知事に、2点私から再質問させていただきます。まず1点目、水枯れや地盤沈下への対応について、質問させていただきます。今、原因究明とか応急処置ということで、環境をどう戻すかという議論には、この地盤委員会では、まだ至っておりません。住民としての要望は、自然環境や文化を守ってほしいということが要望です。その声を受け止めて、知事としても、県としても取り組んでいく必要があるのかどうかというあたりを伺いたいと思います。知事意見を出す立場ですので、その点について、どういった姿勢でこの問題に取り組んでおられるのか伺います。
それから事業の再検証についてですけれども、リニアの活用戦略は、自然環境などの保全が前提であるべきと言われましたが、その前提が、今崩れつつあるのではないかというのが私の意見です。特に、先ほどご紹介されたように、薬液の注入はまだ仮注入で、本注入できるかどうかわからない。JRとしてもできなかった場合、どうするのかという新たな案は、この間ずっと出されておりません。この先、どうやって、これを解決するかという見通しが示せていないのに、これが将来の岐阜県のためになると、私は言い切れないと思います。そういう意味で、この事業の検証、全体の検証というものが、県としても必要なのではないかと思います。検証の必要性について再度伺います。
答弁 知事
恐らく1月の中下旬になろうかと思いますが、次回の地盤委員会でJR東海の方から、先ほどご紹介した論点についての一つの答えといいますか、どういう方向で進めていくのか、どういうスケジュールでやっているのか、これを出していただこうということになっておりますので、ここで、どの程度議論が深まるかと言うことが、今大事なところでございまして、その準備といいますか、1月の中下旬に向けて、JR東海も今、鋭意作業しておられると思いますので、それを待ちたいと思っています。いずれにしましても、ご案内かと思いますが、この地盤委員会では、この問題、今回の問題、六つの論点に整理をして、それぞれの課題について丁寧に審議をしてきているところでございます。六つというのは、影響範囲の把握、原因究明、応急対策、拡大防止策、モニタリング、そして水環境の保全ということでございまして、この水環境の保全の中では、水資源の影響や回復の将来予測ということも含めて、議論しておるわけでありまして、まだまだ議論が尽くされていないというか、途上にあるということであります。
急がば回れというふうに申し上げましたけども、そういった問題を一つ一つ丁寧に、かつ地元にも寄り添って解決して行くと言う、そういう方向を見出して行くということが、今大事でありまして、そのことに私どもとしては今、全力を尽くしているというところでございます。
そういう意味で、検証といいますか、事業そのものの検証という話がございましたけども、今はそういうまだ時期だとは思っておりません。まさに六つの論点を一つ一つ答えを出していくという、そういうことに全力を尽くしていきたいと思っております。したがって、中央新幹線の事業としての意義そのものについては、いささかも考え方が変わっておらないということでございます。
再々質問 中川

これが岐阜県民にとって本当に大事な事業なのかどうか。これは何度も検証は続ければいいと思いますので、県として、きちんと検証する必要があると思います。加えて、国に対しても、この事業を認可しているのは国ですので、国に対して、これが本当に県民の生活にとって、大事なことなのか、続けていっていいのかどうか、これは何度も、この検証を重ねて、本当はやっていくべきだと思います。そういった要望もお願いしたいと思います。
答弁 知事
リニアにつきましては、事業そのものの検証作業というのは、本来、事業認可をしている国の仕事というふうに思っておりますが、私どもがやるべきことは、環境保全あるいは安全ということについて徹底的に解明をする、究明する。これを検証と言えば検証なんですが、まさにそのことを徹底的にやっていくという途上にあるということでありまして、まさにそこで答えを出していくことに私どもは全力を挙げているということであります。次回、1月の会合でどういう答えをJRが持って来られるか、それを一つまた見ながら、何とか早期に解決をしていきたいというのが私どもの現時点での立場でありまして、根っこからその事業の、なんと言いますか是非そのものを問うという状況には、岐阜県としてはないというふうに申し上げたいと思います。