2025年1月14日 3:20 am
カテゴリ: 活動報告
2024年第5回定例会 中川ゆう子県会議員の代表質問及び県当局の答弁
(2024年12月13日)
2、賃上げ支援について
中川
続きまして、賃上げ支援について伺います。先ほどの県政世論調査では、3年連続で「生活が苦しくなった」という方が「変わらない」を上回りました。要因はダントツで物価高騰による支出増。次いで給料などの収入が増えない、または減ったという回答です。
厚労省が発表した最新の10月の統計調査では、名目賃金から物価上昇の影響を考慮した実質賃金が、ようやく前年同月比でマイナスから横ばいとなりました。ちょうど最低賃金の引き上げのタイミングもあり、その効果が少しずつ表れているとも言えますが、これまでずっとマイナスが続いていたということ。さらに、業種や事業者規模で見ると、まだまだ課題があります。幅広く全労働者の賃金を底上げするために、特に給与水準が低い小規模事業者や、給与水準が製造業の8割から7割にとどまっている卸売小売業、医療、福祉の分野への支援を強化していただきたいと思います。
これまで岐阜県では、企業が稼ぐ力をつけるという点に集中した小規模事業者の設備投資等への支援などの政策が展開されてきました。しかし、同時に、賃金を上げる経済対策も重要です。
他県では、県独自に賃上げの支援を創設し、積極的に取り組む事例が出ています。山口県では、「初任給等引き上げ応援奨励金」を創設し、初任給や若手従業員の賃金を引き上げた中小企業に対し、1人当たり10万円を支援。岩手県では昨年度、時給50円以上引き上げた企業へ1人当たり5万円を支給する「物価高騰対策賃上げ支援制度」を創設。さらに、今回の最低賃金の引き上げを踏まえた支給額の引き上げ等、制度拡充を年内に行うという方向で検討しているということです。
一昨日、国の経済対策に伴う補正予算案がこの議会で追加上程されました。しかし、経済対策としては物価高騰対策が多く、賃上げに直接関わる支援策は見当たりません。県政世論調査では、物価高に賃上げが追いついていないことで県民生活が苦しくなっていることがはっきりと表れております。他県の取り組みも参考に、賃金を上げる支援を検討すべきと思います。
※岩手県物価対策賃上げ支援制度令和6年度一般会計補正予算岩手県物価高騰対策賃上げ支援費詳細は岩手県ホームページをご確認ください。
※山口県初任給等引き上げ応援奨励金山口県初任給等引き上げ応援奨励金詳細は山口県ホームページをご確認ください。
(1)これまでの事業者支援の成果と課題について
そこで質問です。1点目、知事にお聞きします。これまでの事業者支援の取り組みは物価上昇を超える賃上げにつながったでしょうか。成果と課題をどのようにお考えか、お聞かせください。
(2)賃上げを行う事業者への支援について
2点目も知事にお聞きします。 先ほど他県の事例をご紹介しましたが、稼ぐ力をつける支援と直接的な賃上げ支援の両面での支援が重要ではないかと思います。経済対策として、賃上げを行う事業者への県独自の支援が必要ではないでしょうか。答弁 知事

現在、政府は「賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済」の実現を目指し、経済界への要請、最低賃金引上げ等、国を挙げて様々な対策を展開されております。県としても、事業者の賃上げにつながる支援は、県経済の持続的発展と共に県民生活に直結する重要な政策と受け止めております。
そのためこれまで、小規模事業者向けの伴走型補助金をはじめ、生産性向上のための技術支援、商品開発、販路開拓など、中小事業者の「持続的な稼ぐ力」を強化する支援を第一としてまいりました。加えて、賃上げの原資となる「適正な価格転嫁」促進に向け、政労使23団体で締結した協定に基づき、実態把握や優良事例の共有を図るなど、機運醸成を図ってきたところでございます。その結果、小規模事業者補助金では、この5年間で1,900事業所を支援し、うち6割では売上げの増加を確認しております。
また、実質賃金の動きを見ますと、令和5年の実質賃金指数の年平均では、本県が全国を2.1ポイント上回っており、今年1月に入ってからも直近データのあります9月まで、国全体では、ほとんどの月が前年同月比マイナスであったところ、本県はプラスマイナス半々の状況を維持しております。また、7月に実施した県の調査では「賃上げを実施する企業が増えている」「人材が資本との意識を持ち、利益を社員に還元した」など、賃上げの機運の広がりが感じられております。
一方、価格転嫁につきましては、県産業経済振興センターが9月に実施した、企業1千社への調査によりますと、3割超が「概ね出来ている」、4割弱が「労務費以外は概ねできている」あるいは「労務費以外は一部だけ転嫁できている」とする反面、依然として3割弱が「転嫁出来ていない」と回答しております。この転嫁できていない要因としては、「取引先・消費者の理解が得られない」あるいは「理解が得られるか不安で交渉ができない」といった声が大勢を占めております。
こうした現状を踏まえ、改めて賃上げを実現するためには、一過性の賃上げの原資の補填ではなく、引き続き持続的な「稼ぐ力」による支援と、価格転嫁のさらなる機運醸成が必要と考えております。そこで、まずは今後とも「稼ぐ力」の支援として、事業転換や規模拡大、生産性向上などに意欲的に取り組む小規模事業者の伴走型支援や、売上・在庫管理をはじめとする様々な業務の効率化に取り組む中小企業のデジタル・DXの導入促進を強化してまいります。
また、「適正な価格転嫁」につきましては、来年の賃金交渉に向けた全国最初の地方版政労使会議として「岐阜県経済・雇用再生会議」を今月中に開催いたします。県内の経済団体や労働団体のトップに加えて、今回は国から、厚生労働省幹部や公正取引委員会にも参加してもらい、来季の賃上げに向けた県内企業の機運醸成を大いに図ってまいります。
再質問 中川

直接的な支援については、一過性の原資の支援ではなく、県としては稼ぐ力をもっと付けてもらうんだ、その支援に集中していくと、そういった姿勢なのはわかりましたけれども、他県で、私が紹介した岩手県とか山口県、一過性の支援ではなくて、この先も賃金が上がったらそれを維持するというその制約のもとに、この補助金というのは支払われております。3割が、今、賃上げができていないということを把握されているということでしたが、県の支援メニューを見てみますと、設備投資とか事業転換、事業拡大への支援なんです。加えて、賃上げをした場合はその補助率が上がるというものでして、新たな投資をしないとこの支援というのは受けられない。中には、新たな投資というのは難しいけれども、最低賃金の引き上げとともに従業員の賃金を上げていこう、いろいろ工夫しながら最優先でやっていこうとする企業もあると思います。そういうところへの支援として、他県では直接的な支援もやっておられるということです。これまでの県の支援自身は、否定しませんが、それと同時に、そういった直接的な支援、この両面が今1番重要なんじゃないかと思いますが、その点についてお考えを伺います。
答弁 知事
賃上げについてでありますが、いろんな考え方、いろんなやり方があるわけでありますけれども、岩手県が今年2月から既に実施しておられて、様子を聞いてみましたけれども、実質賃金指数は本県と同様にプラスマイナス一進一退ということで、まだ有意な差異が見えていないという話も聞いております。私どもは、まずはやはり持続的な賃上げという観点から、稼ぐ力を強化すると、そして適正な価格転嫁を実現するという、この両面からを積極的にやっていきたいということで、賃金をあげたら、はい10万円あげます、5万円あげます、というやり方については、現時点では全体の中では、今は考えていないということでございます。
再々質問 中川
賃上げ支援ですけれども、 今まで県がやっているこの支援、特に中小企業を集中的にきちんと応援するということについては、重要だと思います。加えて、設備投資が条件になっているような支援ではなくて、賃上げそのものを勝ち取っていくための支援というので伺いました。岩手県などいろんな事例がありますし、それは地域それぞれで考えておりますし、それがすべてではないですけれども、賃上げに狙いを定めた支援、これを調査し、研究して検討する必要が、岐阜県でもあると思います。特に、全国的にも 中小零細小規模事業者の場合、かなりの割合、赤字企業です。そういう中で、設備投資はできないけれども、それでも賃金を上げていってもらわないと、底上げというのはできませんので、その姿勢を、ぜひ県としても持っていただきたいと思います。再度伺います。
答弁 知事
賃上げにつきましては、現在、県がとっておる考え方についてはご理解をいただけておるということでございますが、それと加えて、賃上げという視点で政策はできないのかと、こういう話でありますが、これも各県の対応の状況もありますし、それから、これから財源、それこそまさに財政をどういうふうに組み立てていくかということもございますけども、一つの手法としては、当然これから予算編成を行っていく上で議論はしていかなければいけないだろうというふうには思っております。(3)福祉施設職員の賃上げに向けた支援について
中川
次に、他業種と比較し給与水準が低いことが以前から課題となっている福祉施設職員の賃上げについて、それぞれ伺います。①保育士の賃上げに向けた支援について
まず、保育士の賃上げに向けた支援についてです。ようやく保育士の配置基準が見直されましたが、それでも現場では、配置基準以上に保育士を配置しないと子どもたちを安全に保育することは不可能だとの声が寄せられています。
多くの保育施設では、国の配置基準以上に保育士を配置していますが、財政支援は 配置基準に基づいており、実際には賃金が他業種の水準まで上がっておりません。
また、小規模保育事業者からは、これまでの国の処遇改善を歓迎する一方、認可と認可外保育で職員の処遇改善に差が出ている現状が訴えられております。例えば、3歳未満児を保育する小規模保育と3歳以上児を保育する認可外保育を1つの施設で運営されている方からは、同じ保育でありながら、3歳未満児は保育士の処遇改善が進んでいるが、3歳以上児の方は保育士の健診費用等しか支援がなく、最低賃金ぎりぎりの状態であると県に支援を要望されています。
認可外保育所は待機児童解消のため重要な受け皿になっていますし、今、国全体で進めている賃上げは、認可、認可外に関わらず全ての保育労働者を対象にすべきです。
そこで、子ども女性局長にお聞きします。国において保育士10.7%賃上げが検討されていますが、公定価格の引き上げであり、認可外や配置基準以上の配置をしている実態を見ると、数字通りの賃上げとならない可能性が大きいと思います。
また、認可外保育所など対象から外れる施設の保育士の賃上げをどうするか課題です。県独自の支援策、必要ではないでしょうか。
答弁 子ども・女性局長

県ではこれまでも、3歳未満児に対し基準以上の職員を配置したり、障がい児、医療的ケア児といった配慮を要する子どもを支援する職員を配置する保育施設に対して、経費を支援してまいりました。また、保育士の業務をサポートする保育補助者や短時間業務職員の配置といった、保育現場の課題に応じた支援も実施してきております。
さらに認可外保育施設には、認可施設に入所できなかった子どもの受入れの運営支援を行うとともに、市町村とも連携して、認可基準を満たす保育施設への移行を支援しております。
今後は、保育施設運営者に対して、働き方改革や労働環境の改善に関する研修の開催や、マネジメントに関する指導助言を行いながら、保育士等の適切な処遇改善についても促してまいります。
※(1月14日に掲載した写真に誤りがありました。お詫びして、訂正させていただきます。)
② 介護従事者の賃上げに向けた支援について
中川
続いて、介護従事者について健康福祉部長にお聞きします。介護従事者においては、今年度報酬改定があったものの、他業種との比較や物価高の状況を勘案すると十分とは言えません。県内の市町村では、独自の処遇改善支援が行われていると聞いていますが、県として賃上げにつながる支援が必要ではないでしょうか、お聞きいたします。
答弁 健康福祉部長
介護従事者の賃金は介護報酬の中で算定され、その引上げは、介護保険料、サービス利用者、国、地方自治体の負担に影響を及ぼすことから、国が介護保険制度全体の中で検討すべき問題です。国では、介護従事者の賃上げに向け、本年4月の介護報酬改定において、介護職員等処遇改善加算の加算率を引き上げるとともに、加算取得のための申請様式を簡素化し、事務手続きを容易にするなどの取組みが進められています。一方、県ではこれまで、事業所から相談を受けた際に社会保険労務士等を派遣し、加算の取得を支援してきましたが、本年9月からは、取組みを拡充し、加算を取得していない約200の事業所に対して積極的にアプローチを行い、取得を働きかけているところです。
加えて、今般の国の補正予算案において、職場環境の改善等を図る事業所に対し、介護従事者の人件費などを補助する事業が計上されていることから、その活用を検討するとともに、引き続き、国に対し、介護従事者の更なる処遇改善を要望してまいります。